Melko

アリスの恋のMelkoのレビュー・感想・評価

アリスの恋(1974年製作の映画)
3.6
“I wanna go!”
“No.”
“Yes!”
“NO!”
“YEEEEEES!!”
“NO!!”
“Shit!”

味わいのあるジャケで気になってた作品
しっとりと大人の恋を描いた物語かと思いきや、全然違ってズッコケ笑
未亡人と一人息子のドタバタ生活奮闘記(母親の珍ラブストーリー描写多め)だった。
しかも監督がスコセッシって!
だからなのか、若々しいハーヴェイ・カイテルさんが出てきてビックリ!ニコニコしながら登場したから、「絶対何か裏がある…」と思ってたら、とんでもねぇ本性のゲス野郎だった。ある意味、期待を裏切らない暴れっぷりに天晴れ!

「こんなに頑張ってるのに、なんで何もかもうまくいかないんだろう…ただ幸せになりたいだけなのに…」な悲劇のヒロイン気質の主人公アリス…は置いといて、この作品の白眉は、息子トミー。
気に入らないことがあればすぐ手が出るし、育児に全く興味を示さない父親と、そんな夫の顔色ばかり伺い、八つ当たりのように怒ってばかりの母親の元で、自らの身と心を守るかのように、かなりサバサバした現実的な性格で口が悪く、子供特有の無邪気さを忘れてしまったようなトミー。
父親が突然事故死しても、特に悲しくない。多分そこまで愛情を注いでもらった記憶がないのかもしれない。母親アリスと2人きり、学校も行かせてもらえず、モーテル暮らし
母親アリスの性格を濃く受け継いでるのか、中身が成熟していない大人子供なアリスとくだらないやり取りで盛り上がる時もあれば、弾みで暴言を吐きまくってしまったり、成り行きとはいえ飲酒や万引きもやる、いわゆる悪ガキ。ああ言えばこう言う、その減らず口は圧巻。
だけど、アリスの男癖の悪さを冷静に心配したり、生活のためにウェイトレスとして仕事を得たアリスを「歌えないじゃん」と気にかける優しさもあり。もう少しすると本当に口も聞いてくれなくなってグレるかもしれない、嫌らしさとあどけなさが同居していて面白かった。

あとそんなトミーの友達オードリー役で出てきたのがジョディ・フォスター!
独特の言い方してる”weird (変だよ)”のセリフが印象に残る。
低い声で宝塚の男役みたいに喋る。トミーの方が声が高いぐらい。髪型もあいまって、あら美少年!と最初思ってたら…
ラストのセリフが
“So long! Suckers!(あばよ!バカやろー)”でウケる笑

カフェでの女同士のやり取りも、こんなんあるよねーと思いつつ、ラストが納得いかないのでこのスコア。
これは時代もあるのかもしれないけど、美談でまとめて欲しくなかったなぁ
女性の自立がテーマなら、キチンと自立させてほしかった
旦那が死んで、一瞬は悲しんだだろうけど、悲しんでばかりもいられない。生活に追われるうちに、新たに恋もする。女は強い。
「男がいないと生きていけない」って言ってたアリス。私はそんなことないと思う。アリスは、男がいなくても生きていける気がする。
ほんの少し中身が成長したアリス、精神年齢がトミーよりほんの少し上なだけのアリス。
きっと、現代でそれを映像化すると押し付けがましくなるんだろうな。女性の声が大きくなりすぎる時があるから。でも今の感覚でこういうテーマを扱う作品を見てみたいかも。
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