80年代の映画界における有色人種の位置に興味を持ったので、観たことなかったこちらを選択。ほぼ全キャストが黒人で、メジャー映画にしては珍しいケースだと思うが、大ヒット作を連発したスピルバーグ監督だからこそ通った企画だったのかもしれない。
時代設定は1900年代初頭から第二次大戦前くらいまでなのかな。しょっぱなからローティーンの少女(主人公のセリ―)が父親に妊娠させられ、すでに二人の子どもを産んでいるというキッツイ話。まもなくセリーは父親ほど歳が離れた(と思われる)別の男に嫁ぐことになる。そしてこの男がまた、妻を奴隷のように扱うDVのにこごりのような男だった…。妻を人間だと思っていないので、別の女性と結婚したかったと平気で言い放ち、その意中の女性を(色々あって)家に同居させるんだけど、そこから話は思わぬ方向に進んでいく。
最近「シスターフッド」というテーマが注目されてるけど、この映画はすでにこれを扱っており、劇中でも「シスター」という呼びかけが出てくる。タイトルに「パープル」と入っており、劇中で希望の色として描かれている意図は知らないけれども、19世紀末に英国で起こった婦人参政権運動も「紫」をイメージカラーにしており、女性のエンパワメントを象徴する色なのだろうか。
理解ある男が現れるような展開は一切なく、少なくともこの劇中ではほぼすべての男性がものすごいクズ~悪くはないけど良くもないくらいのグラデーションの中にいる。とにかく若い娘を支配下に置きたがる男の欲望が気持ち悪いことこの上ない。これが当然のことだった時代もあった…。
批判もあるようだけど、これを白人男性監督であるスピルバーグが、この時代に撮ってるというのは、やはりいろいろな意味で傑出していると思う。映像美もすばらしい。