あましょく

時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日のあましょくのレビュー・感想・評価

4.6
原題VISIONS OF EIGHT。ゴッホがみるひまわりが私達がみるものと同じではないように映画作家の方々のみるオリンピックは云々〜みたいなナレーションではじまる。
オリンピックをネタにした8人の監督による変な?オムニバスで大好き。各章、各監督がこういう視点でございますと最初にコメントがある。
①THE BEGINNINGは普通にさあ始まるぞって緊張感に満ちていてオリンピックらしいんだけど、②マイ・ゼッタリングの重量上げ編では「スポーツには興味ないけど執着には興味ある」と、この人とは気が合いそうな予感。どうやらベルイマンの初期映画のヒロインだった人みたい。道理でと納得。選手村の膨大なお食事を伴奏に、重量上げ選手をオーバーラップさせるオーガニックなユーモアが少女趣味をくすぐる。
③はボニーアンドクライドのラストを選手に投影したアーサー・ペンの棒高跳び。極音のオーディエンス、クライマックスの応酬とサプライズ。
④は女性選手編。いだてんのオープニングでも印象的なロシアの体操選手リュドミラ・ツリシチェワの息を飲む必死の演技に静謐な感動がわきおこる。他の美女もアリアも印象的。
⑤はミスター東京オリンピック市川崑が1/4スピードで撮影したテクニカルな男子短距離走で、まあなんかお金があったんですかね。
⑥のミロス・フォアマンTHE DECATHRONも最高だった。さすが音楽映画の巨匠。冒頭のナレーションもロックで大好きだし、ヨーデルから第九までコミカルでありながら2日間10種競技の過酷さをダイナミックに織り上げていた。
⑦のルルーシュは、敗北した選手の孤独を淡々と映し出す。涙と見せないプールの中の水泳選手たち、審判に止められても戦った仲間に最後まで敬意を止めないレスリング選手、とてもドラマティック。
⑧はやっぱりオリンピックの中では花形種目なんだろうなとシュレシンジャーのマラソン。スペースオデッセイと長距離ランナーの孤独。管理体制の問題を指摘したアナウンサーは面白かったけど、テロ問題は痛ましくて、今度の東京でも不安…。

最近は映画界が複雑過ぎるのかあまりお目にかかれないけど、毎回オリンピック映画はこの形式でしてくれたらいいのに。
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