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にがい勝利のT0Tのレビュー・感想・評価

にがい勝利(1957年製作の映画)
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2023.3.3 16-18

おもしろいが、大事なところがよくわからない。

冒頭、特殊部隊の訓練用ダミーが並ぶ部屋が映し出され、奥から軍人が列を成してやってくる。この冒頭のショットは非常に印象的である。ショットに立ち並ぶのは人称性の帯ない人形たちであり、列を成してやってくる軍人たちもその例外ではない。

ジミーは、終始アイロニカルな態度で対応する。彼の中で「戦争」以前以後は重要な問題である。戦争が彼をアイロニカルにさせたようである。
対してブランド大佐、ブランド夫人は素直である。ブランド夫人は、過去の恋人であったジミーに未練を残す。大佐は、故にジミーのことが許せない。

とはいえ、ジミーと大佐は根本のところで共通する。彼らは共通して、人を殺すことに対して(広く死に対して)恐怖を感じる。ジミーはこの恐怖に対してアイロニーの立場をとる。彼のアイロニカルな態度は、実はこれに由来することが、映画中盤で明らかになる。ジミーは殺すことには躊躇をしない。それに対して、ブランド大佐は、恐怖に怯えて人を殺せない。しかし彼は自分で手を貸さないのであれば、殺すことに対して躊躇しない。

この2人のドラマを核に映画は展開する。ジミーのアイロニカルな態度は、殺そうとした大佐を助けるという矛盾に帰着する。彼のアイロニーな態度は、倫理を排除するものではない(大佐を救うことが倫理的か、という問題は置いておいて)。それに対して、大佐は終始利己的であり、結局ジミーを徹底的に無下にし、任務を遂行する。

大佐は徹底的にジミーに対して勝利しようする。しかし、ジミーは死に際、ブランド夫人に対して「遺言」を残す。実はこの遺言こそ、大佐に対する絶対的勝利をもたらす(ブランド夫人にとってジミーは永遠になる)。それをよくわかっている、大佐は夫人にその遺言を曲解して伝える。とはいえ、大佐の敗北は、彼自身にとって決定的である。大佐は、任務を遂行したことに得られた勲章をダミーにつけ、映画は終わる。

ざっと、映画の流れは以上のようだが、なぜ「君が正しかった、僕が間違えていた」というジミーの夫人に対する遺言が、決定的なのか。そして、なぜ大佐は、それ誤魔化し「ジミーは夫人を愛していた」と曲解するのか。そこが難しかった。

特殊部隊がドイツ陣営に乗り込むシーンと、砂漠のシチュエーションが良かった。でももうちょっと砂漠を活かせそうと思ったが。割と単純に一シチュエーションに過ぎない感じがした。
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