チッコーネ

天安門、恋人たちのチッコーネのレビュー・感想・評価

天安門、恋人たち(2006年製作の映画)
3.5
たくさんの若さや才能を無駄にしてしまうのが、政情不安やその先にある戦争の怖さ。
日本の安保闘争も然りだが、理想実現への行動が挫かれた後には、”シラケの時代”が待っている。

天安門事件の混乱の中、恋人と別れたヒロインは、次々に別の男と関係を結ぶようになる。
思想を深めることが無駄だとわかってしまった以上、
最も手っ取り早いやり方で、フィジカルに自分を伝えようとすることだけが、彼女の情熱の向かう先なのだ。

そうして「愛される」ことについて未成熟なまま齢を重ねた彼女は、いつも心の拠り所であった...つまり知らず知らずのうちに心の中で理想化していた...男と再会し、ふたりが同じように、砂を噛むような日々を送ってきたことを思い知る。

「目的なく孤独に生きる」とは、劇中のセリフだが、
本作の狙いは、登場人物と同世代の人々の心にぽっかりと空いた空虚な穴を、丹念に描くことにあったようだ。
観ることで浄化された中国人もいるだろう。
また外国人に共感できる普遍性も、きちんと備えている。
(鑑賞当時のブログから一部改稿して転載)