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ルー・サロメ/善悪の彼岸 ノーカット版のくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【ニーチェは色ボケ】

これは『危険なメソッド』の後で思い出し、久々に再見したものでした。インテリ男女の三角関係って意味で物語が近く、時代的にも接点があります。ルー・サロメは、ユングが離れ始めた頃のフロイトに近づき、師事していたそうなんですね。

19世紀末。知的で自由奔放、インテリにモテモテのルー・サロメは、哲学者パウル・レーと大物ニーチェに求婚され、断るものの、聖三位一体とかいう「?」な共同生活を提案し、三人で暮らし始めます。当然うまく行かず(笑)、知的どころか痴的な修羅場と化すのでした。

リリアーナ・カヴァーニ作品は『愛の嵐』がチョー好きなのですが、比べるとこちらは散漫な仕上がりで、映画の肝がわかりにくいです。

で、印象一言でいうと「破廉恥」(笑)。でもそこがチューくらいに好き。

哲学者が全く哲学せず、肉欲や執着心などに溺れまくって破滅へGO。みなさんお悩みなんですねえ、とそれなりに切実さは伝わりますが、哲学は実生活の問題解決には、まるで役立たず、と改めて学べる作品です。

ニーチェさんは、神は死んだ!と叫ぶまでは理性的だったのに、本作をみると、その後はサッパリだったご様子です。毒持つ美少女に、梅毒もらったのが運のツキだったのでしょうか。「ニーチェの馬」のエピソードなども実に痛々しく再現されてますね。

物語には監督の好みがそうとう、炸裂していると思います。要は、男をいたぶるのが好きで、その悶えを眺めたいのではないかと。で、ルーはパウルとニーチェのいたぶり役として機能していますね。

彼女に惚れる二人は、崩壊が丁寧に描かれることで内実が透けますが、彼らに溺れず生きるルーは、その上に蠱惑的な謎として君臨します。…本作で見える分では、隠れビッチだと思うんですけどね。

ルー役ドミニク・サンダさん、花瓶に放尿など過激なコトもしますが、彼女の気品がビッチを隠して、かえっていやらしい(笑)。

で、最大の見せ場はやっぱり、崩壊中のニーチェが見る白日夢、締まる筋肉跳ねる、全裸男ペアの大胆変態バレエ!(股間のみ粉飾)

「練馬変態クラブ」の完全実写化としてみてもお見事なのですが、今回み直したら、ショーとしてきちんとし過ぎていて、何故これが狂気のエビデンスなのかは、よくわかりませんでした(笑)。

<2013.4.8記>
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