あんず

ナイト・オン・ザ・プラネットのあんずのレビュー・感想・評価

4.1
わざわざ、原題のEarthをザ・プラネットと変えることにどんな意味があったんだろうか?オープニングで素朴な疑問が……戸田奈津子の字幕が懐かしく感じた。

『ちょっと思い出しただけ』を観て、どうしてもこの作品が観たくなり、あの映画が壮大な予告編だと勝手に位置付け、5都市のタクシーを巡るオムニバスムービーという情報以外はほとんど入れなかったため、想像していたよりお洒落な感じじゃなかったし、もっとウィノナの出番が多くて、何だったら5都市それぞれに別人として登場することを期待をしていた。しかし、彼女が出て来るのはロサンゼルスのみ。とっても存在感があってキュートだったけど。

ロス以外のニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの4編もそれぞれに味わいのある会話劇で、何度も頭に『偶然と想像』がちらついた。色んな国の美味しい料理を少しずつ食べられたようなお得感満載だった。

1番好きな話はパリ。偏見と無知はとても似ているし、相手のことを知ろうとすれば、偏見や差別も減って行くんだろうなと思った。何でも「感じる」という格好良い女性は、本当に目の見えない人が演じているのかと思ったら、かの有名な『ベティ・ブルー』の主演女優とは。これは、そちらも観なくては。

1番面白かった話はニューヨーク。まさかのドライバーと客が入れ替わる。お笑いコンビのようなやり取りに劇場にも笑い声が。ニューヨークの治安がまだものすごく悪かった90年代初め、乗車拒否という露骨な差別もあって驚く。今やお洒落で人気のブルックリンもこんなに荒んでいたのか。そして、元道化師のドライバーが東ドイツから単身やって来たというのを聞いて、ウクライナから避難する人たちを思ったりして胸が痛む。

1番乗りたくないと思ったのは、ローマのマシンガントーク暴走タクシー。笑える所もあったけど、運転手としては、もう、これは酷い、酷すぎた。『ライフ・イズ・ビューティフル』の名優ロベルト・ベニーニが演じていてビックリ。

偶然乗り合わせたタクシーの運転手に限らず、見知らぬ誰かと、もしくは知っているような気になっている誰かとでも、少しの時間、ちゃんと会話をしてみると何かが起こる(良いことばかりじゃないけど)。タクシーは密室である程度の時間一緒にいるから、きっかけがあると自然と会話しやすい環境なんだろうな~。

私も今日、苦手と思っていた人物と珍しく1対1で話してみたら、意外にも共通の趣味があったり、好きな色が同じということが分かって、楽しく話せた。
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