pop1281

ナイト・オン・ザ・プラネットのpop1281のレビュー・感想・評価

5.0
なぜ私たちはジャームッシュの描く「なんでもない世界」に心惹かれ、こうしてまた劇場へ赴くことになるのだろうか。第一話でジーナ・ローランズが車窓を流れるロスの街並みを見つめる。街並みの短いカット。なんと饒舌で美しいことか。なぜこれだけ映像が私を感動させるのだろうか?
それはジャームッシュが「映像」を信じ、街を愛するフィルムメーカーであり、その映し出す全てが美しい構図こそが私を惹き付けるのだと確信していく。
そして不意に溝口の映画を観たいという強烈な欲求が巻き起こり私は動揺する。
しかしその動揺もパリ編における、現代を貫く洞察が、この映画自体がもはや確信であり歴史なのだという安堵に変わるとき、あの盲目の女が言うのだ「映画を感じるのよ」と。
この映像が溢れかえり、もはや映画を観るという行為が曖昧な世界において、溝口まで遡ることなく私たちは映画を発見することになるのだ。
そして私がこんな場所で呼び起こすまでもなく、ジャームッシュの構図が日本人監督により模写され、その作品がアカデミー賞にノミネートされるという奇跡的な出来事が、映画が消費されていく絶望的な状況に希望を与えることは間違いないだろう。
そうなんだ、私が小さな劇場のなかで溝口を思ったとき、世界はハマグチを賞賛しているのだ。
なんてことだ!ああ!ジャームッシュ!ジャームッシュ!ジャームッシュ!!
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