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ペトルーニャに祝福をのpop1281のレビュー・感想・評価

ペトルーニャに祝福を(2019年製作の映画)
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多くの画面をシンメトリーで構成したこの映画を単に一人の女性の社会あるいは宗教と対立による成長談と観ることは出来ない。
シンメトリーとは反転しても変わらない性質。すなわち、そのほとんどの登場シーンをシンメトリーのなかで描かれる主人公の女性は、人生観が変わるような経験をしたにも関わらず本質は変わることないのである。
それは物語の軸となる十字架の騒動に対して社会的な意味を持たせようとするインタビュアーの質問に対してなに一つ答えることない(答えなどそもそも持っていない)主人公の態度や、ラストにおける彼女の十字架に対する心変わりが、男性からの些細な優しい言葉によって萌芽することに見てとれる。
結局 、彼女は序盤で男にセクハラまがいに太ももに置かれた手を払いのけるでもなく、自らその手を更に上へと誘うような女のままなのである。
このように物語のうえでは男尊女卑の社会や女性の自立を描いたように見えるこの作品は、ニューヨークで映画を学んだ女性監督から祖国の無自覚で保守的な女性達に対するアイロニーとして見ることが正しいのではないだろうか。
ただしラストにおいて、警察署を出た主人公をカメラはやはりセンターに捉えるのだが、そのみちは蛇行しており主人公は無意識に軸を外れるのである。それこそがこの映画の残酷なカタルシスとなっている。
そしてタイトルの文字通り、主人公の女性が神となるなどという見方はナンセンスであり、神のメタファーは雪道の画の後で不意に出現し見るものを戸惑わせる。この物言わぬショットの力こそがこの映画をベルリンに召喚させた監督の可能性といえる。