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ドント・ルック・バックのFrengersのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・バック(1967年製作の映画)
4.0
1965年のボブ・ディランのイギリスツアーに同行したドキュメンタリー映画。楽屋や舞台裏に迫ったものだけではなく、関係者やミュージシャン、記者やファンの熱狂まで収めたもので、稀代のミュージシャンの実像に迫ったものとしてではなく、ディランを巡る磁場を複数の視点から構成したものといえるかもしれない。

1965年のディランといえば、音楽的には変革期。冒頭の「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」の様に、フォーク、ブルースの形式に則りながら、ロックンロールのリズムや電気楽器を導入し、大胆に変化した時期でもあり、この映像はPOP史の中でも貴重なものなはず。

 映像は関係者の一人にでもなったかの様に親密。出演者がカメラを意識している様子もほぼない。ジョーン・バエズ、ドノヴァン、アラン・プライスも含め、気が向いたからギターやピアノをバックに歌ってみただけという感じ。感情を昂ぶらせたり、リラックスしたり、ふざけてみたりといった日常が映し出される。またアルバート・グロスマンの交渉シーンは、他のメディアではなかなか見えてこない部分で、ショービジネスと音楽の関わり方の一端が垣間見える。

 でもやっぱりディランがカッコいい。とにかく自分と自分の音楽にレッテルを貼らせない。記事の文言をせせら笑い、記者の質問をはぐらかし、ファンとのやりとりも軽やかで、定義付けさせない。これは現代においても魅力的。この映画をロードムービーとして見ると、彼にジャック・ケルアックやウディ・ガスリーの影を見ることもできそう。
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