エイプリル

HOUSE ハウスのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

こういう古い映画を見ることはあまりないので、初めはあまりの滑舌の悪さにびっくりしてしまうのですが、これほどまでにカルト的人気を誇る理由がはっきりわかる名作ホラー映画でした。
ホラー演出の中にもギャグ演出があちらこちらに散りばめられており、この部分は好みが分かれると思いました。例えばいきなり死んで生首になっては笑顔で尻を噛んでくるマック、何故か専用のテーマ曲を持っているクンフー、愛を語っていい話で終わらせようとする叔母様など、見ていて笑えるシーンがたくさんありました。
これはアーティスティックな理由からそういうシーンを含めたという意図もあるでしょうが、それ以上に、本作では「食べる側の喜び・喜劇性」と「食べられる側の恐怖・悲劇性」を対比して描こうとしていたことも関係していたと思われます。
HOUSEは若い女性を食べますが、食事は我々もしますし、叔母様からしてみれば何の悪意もない普通の行為であるわけです。それは食べられる側からは悲劇でしょうが、食べる側からしてみれば嬉しい出来事です。つまり、本作はホラーにおける「被害者」サイドの感情だけではなく「加害者」サイドの感情もフィルムに落とし込んでいるということができます。
そういう意味では食べ物を必要以上に貪り食っていたマックが最初の被害者になるというのは何とも因果で納得できる結果です。
クンフーも最後には死んでしまいますが、終盤までは日本のミラジョコヴィッチと言っても過言ではない活躍で良かったです。
難点があるとすれば、それほど怖くないということです。怖さのピークはマックの生首が井戸から出てくるところで、それ以降はどちらかというと死に際のアートを見ているような気分でした。ただ、あっさり人が死ぬ昨今のホラー映画に比べて、じっくりと死に際を描いてくれる本作は新鮮でした。
たまに叔母様が画面の外の我々を見ているような視線を向けるのですが、これはこちらに気づいているということだったのでしょうか?そういったことも含め、映画というよりも舞台的なフォーマットを生かした画面作りが多く、色々と勉強になる作品でした。
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