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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明のmegurosのレビュー・感想・評価

4.2
清朝末期に実在した武術家であり医師であるウォン・フェイホン(黄飛鴻)を主人公にしたアクションシリーズ第1作。略してワンチャイ。英米の侵略、帝国主義の中で犠牲となる中国人を救うヒーローとしての活躍が描かれる。主演はジェット・リー、製作/監督はツイ・ハーク。

第1作となる今作ではヤクザ軍団”沙河”とのいざこざに巻き込まれる。”沙河”と中国人奴隷貿易を進めるアメリカとが手を組むことで事態はより複雑に、政治的な色彩を帯びながら、フェイホンが営む漢方薬局兼拳法道場である「寶芝林」は火を放たれ、仲間の民兵は囚われの身にもなってしまう。

中国人同士が争っていても、その背後、原因はアメリカが作っているという意味では米中対立が深まる今こそ再見すると味わい深い。銃にはカンフーは勝てないという嘆息は、日本で言えば幕末期の黒船来航以降における銃vs刀の構造だが、フェイホンは完全に西洋化を否定するのではなく、弾を指で弾く、つまりは西洋化の利点も活用して勝利する。

山東省から出てきた”鉄胴拳”の使い手イムとのラストバトル(@米国租界地にある貿易倉庫であり沙河の隠れ家)が今作最大の見所で小麦粉舞う中での梯子アクションでは高低差、空間を巧みに使い、アクション映画史に残る名場面に。

このイム師匠は弁髪の毛先に刃物を隠していたり結局は卑怯で、フェイホンが倒してもOKな理由付けがなされたキャラクターだが、そもそもは生活に困窮していて、名を成そうとフェイホンとに決闘に申し込んだのが発端。そのイムも結局は銃弾に倒れるわけで、中国人同士が争うのは悲しいという後味に。

舞台となっている広東省の佛山は広州市のすぐ隣だが、この当時は英米租界地だったのだろうか。詳細な行政区分は分からないが、英国租界地だった香港、ポルトガルのマカオにも程近く、イップマンもこの地が出身地だという。
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