猫脳髄

ヤコペッティのさらばアフリカの猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.7
ヤコペッティ&プロスぺリが「世界残酷物語」シリーズのいかがわしさを封印し、内乱と野生動物の乱獲が続くアフリカ大陸を3年にわたり取材した現代の「闇の奥」を暴露したドキュメンタリー。

旧宗主国から独立を勝ち取ったかに見えたアフリカ諸国だが、ヤコペッティらは独立後も手を貸すべき宗主国が「彼らを見捨てた」と喝破する。不正選挙や相次ぐ内乱と虐殺、管理者が不在となった自然公園では密猟者たちによる乱獲が後を絶たず、無法地帯と化している。

ゾウをはじめとする野生動物の密猟者による虐殺シーンには胸が痛む。また、ザンジバル革命(1964)に伴うアラブ・アジア系住民への迫害と虐殺を捉えた映像は、衝撃的あるとともに、取材が制限されていたなかで世界的にも希少なものとなっている。さらに、アンゴラ、ルワンダ内戦の悲劇、コンゴ内戦で銃殺される反乱軍の模様など、かなり血生臭いシーンが続く。

一方で、わずかではあるが、ヤラセ・仕込みと思しき風俗シーンが差し挟まれたり、ヤコペッティらの取材が処刑シーンなどを惹起した(ある種のサーヴィスとして)のではないか、との指摘もある。完全なドキュメンタリーが存在しえず(監視カメラくらいか)、被写体が「演じる」ことを避けがたいとすれば、それもまた、アフリカで繰り広げられた「狂気」の様態なのだろう。マージナルな状況下での人びとの生なましい行動には息を飲むばかり。
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