ストレンジラヴ

パリ、テキサスのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.0
「この場所で、俺の人生は始まった」

午前十時の映画祭で鑑賞。元々観るつもりはなかったが、時間ができたのでなんとなく観ることにした。
テキサスの砂漠で行き倒れた男と妻子をめぐるロードムービー。第37回カンヌ国際映画祭でヴィム・ヴェンダース監督にパルム・ドールをもたらした。
これ、日本人は好きだろうね。実際、僕もジーンときた。一歩ひいた立ち位置というか、直接表現しない何か。その余韻をさらに惹き立てるライ・クーダーのギター...必要最小限だからこそロードムービーは味が出る。余計な味付けはいらない。
だがどうなんだろうか?設定上、主人公トラヴィスはあまり遠出をしたことのない人物だと思う。強いて言えば若かりし頃に海軍に従軍していた時期があったようだが、かといって世界を巡ったような素振りはない。とすると、純然たるアメリカ人であるにもかかわらず、その内面はまるでアメリカ人ではない。もちろん全てのアメリカ人が直接的ではないにせよ、劇中のトラヴィスの行動は基本的にアメリカで生まれ育った人間がなし得る判断に基づくものだったのか、それともヴェンダース監督の非常にヨーロピアンで、時々小津安二郎的な感性が反映されたものだったのかが解釈に迷った。まあ、生来の放浪癖で片付けていい話なのかもしれないが。
トラヴィスと、ナターシャ・キンスキー演じるジェーンの壁を隔てたやりとりが見事。ジェーンに身の上を話す際にトラヴィスが椅子の向きを変えたのが妙に刺さった。その後のジェーンもやはり向きを変えて返事をする。その姿がどこかベースボールのようでもあり、或いはいちばんアメリカらしさを感じた場面だったように思えた。
ナタキン、綺麗だなぁ...。