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パリ、テキサスのnowstickのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.7
後のウェスアンダーソンとかに影響を与えたであろう、ミニチュアみたいな映像と、鮮やかな色彩が素晴らしかった。おそらくカラーフィルム、望遠レンズ、パンフォーカスの組み合わせで全編に渡って撮影されているが、この映像表現は当時の最先端だったと思う。

ただ映画が後半に進むにつれて、中年男性に都合が良すぎる展開が、さすがに気になった。そういった展開を、007シリーズみたいに完全にエンタメとしてやってくれていたり、本作と同じヴィムヴェンダース監督作品の「Perfect days」みたいに「真面目に生きてたらいい事あるよね!」のノリでやってくれるならまだしも、芸術映画のノリでそれをやられると、さすがに着いて行けなかった。
冒頭に汚い格好でフラフラの主人公が出てきて、「こんな格好だけど、実は真面目な人間」みたいな設定が後で明かされていくのかな?とか期待して見ていたら、最終的に見た目通りのフラフラした人間だと明かされて、「じゃあダメじゃん」って思った。

あと個人的に、すごくバカみたいな意見にはなってしまうが、自分はやっぱりストーリーの密度が高い映画が好きだ。本作においても、「冒頭の男が荒野を彷徨うシーン」「後の映画、レインマンみたいな兄弟の旅のシーン」「親父が息子を学校に送るシーン」「ナターシャキンスキーを車で追うシーン」「鏡越しに2人が喋るシーン」と要所要所好きな展開はあったが、中盤長いと感じる時間も少なくなかった。

絵的には凄く面白くて、映画史においても重要だし、ストーリーもダメではないと思う。しかし、大したことが何も起きない時間が長いのと、後半の展開がしっくりこなかった。
よって、トータルでは普通よりも少し良い映画ぐらいだと思う。
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