KingKazukiManji

パリ、テキサスのKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.5
あまりにも繊細な人物描写をダイナミックな景観を活かして大胆に描いているのが素晴らしかった。特にテキサスのどこまでも澄んだ青空と背景のゴツゴツした茶色い岩山との対比はあまりにも美しく圧倒された。そこに俳優を配置する構図の上手さ、空間把握能力の高さがとんでもなかった。そして登場人物の心情を示唆するように挟み込まれたカットの数々がとても良かった。とにかくもう景観の美しさと空間センスの手腕にはもの凄い感動させられた。これはもう映像技術とセンスのレベルの高さからパルム・ドールも納得というか何というか。

ほんとうにヴィム・ヴェンダースは映画を撮るのが上手いなぁと、クライマックスまでは思っていたんだけど、クライマックスの物語展開と冗長に感じるような退屈な演出で一気に冷めた。

マジックミラーの発送は面白かったが、ラストは映像的な面白さがそれ以外あまりなかった。

人の優しさと美しさをこんなにも描いていたのに、ラストで主人公の身勝手なエゴを、男性主義的な考えを肯定していたのが納得できなかったし、最後の最後で嫌悪することになるとは思わなかった。

何故こんな展開にしたんだろうと考えたんだけど、これはニュー・ジャーマン・シネマの旗本と言われていたヴェンダースがヌーヴェルヴァーグとアメリカン・ニューシネマを意識していたようにしか思えなかった。シネフィルの彼は彼なりにニュー・ジャーマン・シネマを模索していったのではないかと感じた。

まぁそもそも小津安次郎を敬愛してるヴェンダースなので、そもそも自分自身と全く合わないという大前提はあるのだろう。

パーフェクト・デイズの時も、クライマックスの展開が好きじゃなかったのと、人間賛歌なのにあまりにも綺麗過ぎるのが故に、どこか引っかかっていた。本作もまたどこか引っかかって終わってしまった。

この違和感は何なんだろう。
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