やっちゃん

パリ、テキサスのやっちゃんのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
5.0
画、ストーリー、俳優の適役さ。どれをとっても完璧な至上のロードムービー。
煙で燻されたような渋いギターの音色と、青い空と砂漠地帯のコントラスト。幕開けはまさにゼロ地点からのスタートで、主人公トラヴィスの内面も砂漠のように干からびている。アメリカ砂漠をひたすら歩き続ける彼の過去になにがあったのか。テキサスからロスへ、ロスからヒューストンへ。次第に人間らしさを取り戻すなか、彼の過去に何があったのか少しずつ明らかになる—。

この映画はトラヴィスと彼の家族の物語である。トラヴィスと元妻ジェーン、息子のハンター。ハンターを引き取っていた弟のウォルトと彼の妻アン。満ち足りた人なんて誰一人いずとも、この映画がじんわりと温かいのは切っても切れない「家族という絆」に結びつけられた彼らが、もがきながらも尊重と愛を持って互いに接する姿が描かれているからだと思う。

また、アメリカの風土と人物を捉えるワンカットワンカットはどれもさりげない格好良さにあふれる。小津の影響が色濃いながら全く新しいものに到達した感が残る。
赤色の使い方、空の色、8ミリビデオの映像、ハンター君のファッション。おもちゃ箱のように詰め込まれた色んな要素がこの映画を唯一無二のものにしている。そして感想として残しておきたいのはナスターシャキンスキーの完璧な可愛さとハリーディーンスタントンの演技。特にスタントンの名演と存在感は心に沁みるものがあった。
やっちゃん

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