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下町の太陽のpapandaのレビュー・感想・評価

下町の太陽(1963年製作の映画)
4.0
撮影に使われた石鹸工場の跡地に建てられた曳舟文化センターで見た。山田洋次監督の第2作、長編第1作。会社は大ヒットした歌を元に明るく楽しい青春歌謡映画を命じたが、山田監督が作ったのは貧しい下町の女性が幸福とは、働くとは、貧しさと裕福とはと真面目に考える地味で重い映画だったので、この後1年間映画を撮らせてもらえなかったとか。でもそのテーマ、監督が寅さんも含めて何回も何度も繰り返して描いている。誰にとっても大きく深いテーマ。デビュー直後からこのテーマに挑んでいるからこそ、60年経っても色褪せない魅力がある。都心のきれいで清潔で理路整然とした様子に対して、隅田川を挟んだ下町の雑然としてきたなくてごちゃごちゃしてて、でも何かあたたかい感じの対比で始まる。下町を出ていく人、とどまる人、その地にしっかり根を張って生きている様子がいい。それにしても爺さん婆さん達の幸福そうなこと。何と懐かしい俳優さん達が大勢出ていることか。そして倍賞千恵子さんの映画デビューのかわいいこと! 昭和の風景と共に貴重な映像だと思う。
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