RyoIkeda

パーフェクト ワールドのRyoIkedaのレビュー・感想・評価

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
4.4
人は誰しも自分なりの信条を抱えて生きているものだ。
そして、それを自身の道標として掲げている。
だが、この作品は個人の持つ信条の正当性について強く語りかけてくるのだ。

署長レッドにはレッドの信じてきた正義があり、ブッチにもブッチなりの正義がある。しかし、物語の後半では個人が抱え、育んできた信条が激しく揺さぶられることになる。それは誰しもが、個人としての立場でしか、周囲の世界を捉えることができないからなのかもしれない。
そして、それが唯一の、完璧な世界だと思ってしまう。

つまりこの作品が突きつけてくるものは、「正義か、悪か」といった二分立でしか考えることのできない視野狭窄に対する警鐘だ。
ハロウィンやクリスマスを祝うことを禁じる「エホバの証人」からの解放や、ブッチの暴走を止めるフィリップの思わぬ行動が印象的。

コメディタッチに描きながらも、やはりクリント・イーストウッドは人間の暗い部分を浮き彫りにしますね。
RyoIkeda

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