キャッチ30

地上より永遠にのキャッチ30のレビュー・感想・評価

地上より永遠に(1953年製作の映画)
3.8
戦争映画と思ったら、最前線の場面は出てこない。軍隊内の陰湿ないじめを告発する社会派映画かといえば、また違ってくる。

物語は二組の男女の恋愛模様である。舞台は太平洋戦争直前のハワイ・オアフ島にあるスコフィールド米軍基地。そこにラッパ手のプルーが赴任してくる。中隊長のホームズは拳闘の経験があるプルーを勧誘するが、ある事件からプルーは拒む。その日から、彼は軍隊内でのしごきに遭う。唯一の味方はイタリア系のマジオであり、売春婦のロリーンとも親しくなる。
一方、曹長のウォーデンはホームズの妻であるカレンと逢瀬を重ねていた。ウォーデンはカレンに将校になれと迫られる。

監督のフレッド・ジンネマンは軍隊内の不条理にメロドラマの要素を挿入している。彼は過剰な演出に頼らない。登場人物の背景も二組の男女の二項対立も克明に描かれている。

やはり目を惹くのは、プルーを演じたモンゴメリー・クリフトだ。要領は悪いが信念を貫く兵士をクリフトは端正なルックスと痩身な肉体で熱演する。ハリウッドの華やかな生活を嫌い、異端児と言われたが、信念を貫く姿も重なる。因みに、マジオ役のフランク・シナトラは当時歌手としてスランプに陥っていたが、本作をきっかけに演技派俳優として開花する。