SANKOU

アイアンマン2のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

アイアンマン2(2010年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

このシリーズはもちろん架空の出来事を描いたアクションファンタジーなのだが、かなり現実の社会問題にコミットした作品であるとも感じた。
ここで描かれるのは単純に悪者を成敗するヒーローの姿ではない。
そもそも平和な世界を目指しているはずなのに、人を殺傷する兵器を日々開発し続けることは大きな矛盾を孕んでいる。
前作で自身がアイアンマンであることを明かしたトニー。
彼は国民から正義のヒーローとして称賛されるが、軍は個人が国家を揺るがすような武力を持つことを許さず彼からスーツ開発のための秘密を聞き出そうとする。
世の中は色々な利権が絡んでいて複雑だ。
「平和の民営化」というトニーの言葉が印象に残った。
そんな最強の力を手に入れたトニーだが、その代償も凄まじいものだった。
トニーの身体はアーク・リアクターの元素「パラジウム」が発する毒素によって徐々に蝕まれていく。
そのことをトニーは恋人のペッパーに打ち明けることも出来ない。
彼のド派手なパフォーマンスや自傷行為とも言えるような豪遊は、そんな彼の不安と孤独な心の裏返しであるとも言える。
ヒーローの栄光と挫折と孤独。
物語を盛り上げるための要素が惜しみ無く詰め込まれた作品だと思った。
トニーはペッパーを会社の次期社長に推すが、次第にペッパーはトニーの破天荒な行動に愛想を尽かしていく。
親友であるローズも暴走するトニーと仲違いし、マーク2のスーツを着たまま軍に帰還してしまう。
今回のアイアンマンの敵、スターク一族への恨みを募らせ、モナコのレース場でトニーに襲いかかるイワンの狂気じみた姿はかなり印象的だった。
彼を飼い慣らそうとする、トニーに対抗心を燃やすハマーの小者っぷりも面白かったが。
ただ、イワンの何をしでかすか分からない怖さが更に強調されていれば、作品の凄味が増していたかもしれないが。
「パラジウム」に代わる元素を見つけ出し見事復活したトニーが、一度は仲違いしたトニーと共にイワンに挑むバトルシーンは見ごたえあり。
今回初登場のペッパーの秘書として潜り込んだ「ブラックウィドウ」ことロマノフの見せ場も十分だった。
何気にモブキャラと思われるような人物にも、しっかりとキャラクターが与えられているのもこの作品の好印象なところかなと思った。
まだシリーズは始まったばかりだが、おそらくこれから話は加速度的に面白くなっていくのだろうと期待せずにはいられない。
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