nagipei

息もできないのnagipeiのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
5.0
ネタバレあります。
公開当初観たけど覚えてなくて今回数年ぶり二度目。
主演監督のヤンイクチュンインタビューで、サンフンがヨンジェを殴りつけてた意味は要領のいいもうひとりの新入りの頬をペチペチしてたコミユニケーションの意図とは違って、ヨンジェに自分と同じ匂いをかぎとったサンフンがこの世界に足を入れるなという無意識の警告の意味があったのでは、と言っていて、そう思って観るとまた違うやるせなさに。
回想シーン見るとヨニの母親に腕を切りつけられたサンフンを見て逆上し彼女を撲殺したのは社長。
孤児だったという彼は今でこそ気前良く気のいい親分といった風情だが、貧困や格差、そこから這い上がるためにヤクザ稼業に足を踏み入れるしかなかったんだろう。
それでも彼もサンフンやサンフンの前科者の父を思いやり、社員である弟分も可愛がり生きた
そしてサンフンの一言から貯めた金で足を洗おうと決意した矢先の不幸
身内のいない彼にとっては、サンフンが家族同然だったからこその決意
しかし悪行に染まらざるを得なかった彼に、復讐のように返ってきたのは創業以来共にしてきたサンフンの死
堅気になり開業した焼肉屋、そこにいるはずの相棒がいない、悔恨からか頭を丸めサンフンが繋いだ人々を笑顔でもてなす姿が切ない。
もしサンフンが生きていてもいずれヨニの母親の屋台を襲ったのが自分達だとサンフンは思い至っただろう、その因果は登場人物誰一人逃れられないかのように物語は暴力を描き続ける
だけど不思議と、救いのない韓国映画は多いけどこの作品はそうは思わなかった。
ヨニに出会った冒頭から人は変われるかもしれないという希望や予感がそこはかとなく画面全体を漂っているからか、胸糞でもない、痛そうだけどグロくもない
歪んではいるがずっと愛に満ちていたように私には見えた
ただ結末は容赦なく…
ずっと張り詰めてた展開から、甥っ子と3人で町を歩くシーンで不覚にもぶわーっと泣けてきて、そのあとにヨンジェの乱れたカラオケシーン。不穏でしかなかった。
ヨンジェはサンフンのあの傷で察してたのかな。
ヨニは最後何を思ったのか。
それでも彼女は呑み込んで強く生きていくんだろうなと私には思えた。
だとしたらヨニはちょっと幻想に近いだろってくらい強い女だけど、未来はそうあって欲しいという監督の願いや女性賛歌、暴力に屈する女性に対する応援、頑張れ、負けるな、やられっぱなしはやめてやり返せ、それか逃げろ、みたいなのも根底にある気がしたので。
追記:学芸会、お父さん誘ったのはサンフン。サンフン以外誘えない。お父さんも、サンフンが促してくれたら入れただろうに…ああサンフン…
ラストは悲劇エンドってのは、監督何も驚かせようとして作ってないと思う。
狙ってもないだろうけど、ずっとそれを予感させる不穏な空気は暴力を描くのに説得力が増す。