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バイオレント・サタデーのENDOのレビュー・感想・評価

バイオレント・サタデー(1983年製作の映画)
4.2
 途方に暮れる怪作!確かに地味。一度挿まれるカーチェイス以外殆ど室内。あの誘拐も狂言なのか?ペキンパーの遺作がここまでメタだと戦慄する。妻の暗殺によって心が壊れたジョン・ハートの複数モニターを凝視する虚な眼差し。複雑なパーソナリティ。何度も妻の死の映像を再生しちゃうリフレインはメンヘラだし、監視カメラで濡れ場を出歯亀なんてキモ過ぎる。大事な作戦中でも、上の空。3つのうち1つのモニターではスポーツ観戦、まさにテレビ中毒者、死んでますね。モニターの故障で電源を落とせず、即興で天気予報士のモノマネする狼狽する姿に、こいつも人間なんだ!と笑いつつ泣いてしまう。
 ハートの傭兵たちはメグ・フォスターの寸分違わぬ弓矢のaim力、ここは最高。
そしてフィルム撮影と監視モニターの荒いビデオ撮影を切り返す大胆で察しされる感覚の斬新さ。
 ネルソンさんはカラテ・マスター。バットで武装したハウアーをボコボコにする。
 裏でKGBと結託して、ソ連のスパイ組織Ωを張子の虎にしてる動機が全くわからないランカスター長官。ハートはそれを知った上で節税野郎の2人を爆殺する。サランドンとホッパー(妻たちは巻き添え)は性格が最悪だとしても、咬ませ犬として無為に死んでいくのは悲しい。脱出できたろ!最後は爆発のリフレインにシェイバーの歌声が谺する…
 ペキンパーが何よりやりたかったのは情報は幾らでも操作できるメディアの恐ろしさと、その構造を維持するための空洞化した権力の虚しさを描くことかな?
 さっきまで司会を務めていたハウアーは、次の瞬間ハートの秘密基地へ。映画の嘘を暴く切り返し、その後の無人の撮影現場。すべてが夢オチのように崩壊してしまう。仮に冷戦下という時節にあったとしても、世界への疑いを促すような荒涼としたラスト。物語は収束せず拡散する。尖り過ぎ。
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