段ボール箱

愛と哀しみの果ての段ボール箱のレビュー・感想・評価

愛と哀しみの果て(1985年製作の映画)
4.5
実在の人物による手記をもとに描かれ、第58回アカデミー賞で7部門を受賞した名作。若き日のメリル・ストリープとロバート・レッドフォードの共演が印象深い。

風と共に去りぬの系譜にあると言ってもよいような女性主人公の一代期だが、アフリカの大地のもと、主演2人の情熱的だが知性ある佇まいや、互いの趣味、文化に対する価値観に惹かれ合う様が時間をかけてじっくりと描かれているのがより現代的な作品だなと思う。
こちらは自伝が元になっていることもあり、風と共に…と比較すると、いわゆる「面白え女」の生き様を見せものとして消費させるような眼差しが少ないのもあるかもしれない。

年老いた主人公の回想から始まり、 ‘I had a farm in Africa.’ (私はアフリカに農園を持っていた) の独白に導かれ東アフリカの大地をゆく汽車が画面いっぱいに広がる。弦楽器によるメロディとともにタイトル・バックが入る流れは、個人的に忘れられないほど美しいオープニング。

映画『007』シリーズでも知られるジョン・バリーによるサウンドトラックは、決して派手ではないが、沁みるような味わいがある。アフリカの途方もない広大さと、愛が静かに生まれ、くすぶり、またその延長線上に長い人生が続いていくさまを2:30程度の長さの美しい旋律に込めた力量に感嘆してしまう。

色々あって恋愛が主題になっている映画を続けて観る機会があったのだが、正直、風と共に去りぬ、カサブランカ、愛と哀しみの果ての3本でこの世のラブストーリーはもう充分という気がした。
ここらへんで全て描き切られていると思う。