つかれぐま

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還のつかれぐまのレビュー・感想・評価

5.0
22/11/1@gdcs池袋
IMAXレーザーGT

合計9時間超!を完走。
もうこれは映画史上最高の3部作。およそ地球を舞台にした1次創作で、本作を越えるのは不可能と思える壮大な叙事詩「人間のあけぼの」。

「20世紀の神話は未来に伝達された」「10年に一度の大いなる冒険」「天才芸術家が造った超弩級の大聖堂」パンフレットに並ぶこれらの称賛が決して大げさとは感じない。それくらい打ちのめされた。原作『指輪物語』にインスパイヤされたスターウォーズ(ep4~6)が語った神話を点とすれば、このトリロジーはその後の映像技術の進化を善用し、その神話を線で繋げて語った「輪=リング」だ。

まず冒頭が衝撃だった。
前作でゴラムはスメアゴルに戻ると信じさせておいて、そのスメアゴルの恐ろしい本性が明らかになる。原作では「二つの塔」に収められたこの部分を、本作の冒頭に敢えて持ってきた脚本が秀逸だ。

今回もバラバラのままの「旅の仲間」だが、その友情が生み出す見えない糸で結ばれた「絆」が最終的には勝利をもたらす。いや本作は彼らだけじゃなかった。アラゴルンに剣を授けたエルフ、ローハンの王と姫、前作では「お姫様」に過ぎなかったエオウィンが覚醒してメリーと共闘する姿はとてもカッコ良かった" I am no man"。あくまで人間たちに任せる姿勢だったガンダルフも、ゴンドールの執政の錯乱を前にしてついに先頭に立って指揮を執る姿は、さすが白の魔法使い様!

こうした各人各様の活躍を振り返ると、人にはそれぞれ運命的な「持ち場」があって、その役割を全うすることで不可能も可能になるのだ。と自然に思えてくる。アラゴルンたちが黒門へ「フロドのために」と突撃し、フロドとサムが滅びの山を這い進む姿にはもう泣かされた。

だが辿り着いた滅びの山で起きた「まさか」に涙は引っ込む。これは泣いている場合じゃない、というハードで容赦のない展開に。だが誰がフロドを責めることができようか。言えることは無垢なフロドですら惑わす指輪の怖さと、サムもまた英雄だったということ。一つの場面だけを切り取って、誰かを悪者に仕立て上げてしまう現代のメディアの怖さにも通じる場面だった。

アラゴルンの戴冠式で、ガンダルフ→アラゴルン→ホビット4人組と綺麗に英雄のバトンが渡り、これで大団円。うん素晴らしかったよ!と思いきや、そこからのエピローグが更に、もう信じがたいほど見事だった。なんというか「泣くヒマがない」感動というのを味わった気がする。

「本当の英雄は誰か」
それだけを記すためにフロドは「指輪物語」を書きあげ、あとはその「英雄」に託す。エルフとガンダルフは旅立ち、ここから人間が自力で歴史を作り始めたことを示唆する「人間のあけぼの"Dawn of the Man"」。そしてこの物語が映画から原作へ、観客も現実へと「帰還」する。

これだけの傑作が、一枚看板の大スター不在、更には巨大資本ならぬ「小国」ニュージーランドで製作されたことにも驚く。快挙という他はない👏