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甘い秘密のotomisanのレビュー・感想・評価

甘い秘密(1971年製作の映画)
4.0
 自分を引っ張り上げようと求める手掛かりが男。これがなかなか踏み台にはなってくれない。一種肉を食うかのような友美だが相手が古だぬきな老先生と生を吸い取る吸血画家では勝手が違いそうだ。
 こんな生き損じてしまったような曇り空な友美の日陰者風がどうも生存戦略と合っていない。そういえば何となく、男を踏み台にして伸し上がる女がジゴロ相手を振り出しに歩く「けものみち」の果てで某フィクサーの慰み者なんかにまでなって銀座あたりの女帝の地位が見えて来るみたいな筋書きを想像したのだが、'71年ではもう古かったのかも知れない。そんなモーレツ気な女より文学をビューティフルに生きる女の虚像が未来的だったのかもしれない。
 それが実は雪の腰越で除夜の鐘を聞いているわけだが、分かる奴には分かるだろうが終夜運転の江ノ電で鶴岡八幡宮に向かえばどうせ万人の人だかり、オイルショックもドルショックもまだ先の世界で新戦略を練り直せばいい、とゆうのもありそうだ。どうせ誠も偽りも筆先三寸、そんな事は百も承知の売文屋稼業はお互い様。も一度老タヌキのもとへ三つ指つきに参上すれば運の欠片が残ってるかもしれない。それとも女ひとりの新しい文学が根付く先を探して、だからあなたならどうする、と夜道をさ迷わせるのだろうか?
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