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着ながし奉行のotomisanのレビュー・感想・評価

着ながし奉行(1981年製作の映画)
4.0
 尾州西尾の夜は大繁盛。盛り過ぎて町奉行が四月に一人あたまが変になってもう三人も辞めていった。夜の西尾のお堀の外、お上の支配の埒外「堀外」で何が起きてる?

 なんてことが御公儀に知れると大変だ。国許ではもう手に余る「堀外」なら奥の手を使って火消しに乗り出さにゃ。参勤中の殿の秘密兵器、小平太奉行がかますのはソフトパワー。呑み比べに色仕掛けの小平太さま人気で街を揺さぶれば黒幕、堀外三人衆も釣られて出てくるわ。こいつ等をまた膝揉みに篭絡して、出てってくれと因果を含めりゃ案外素直に身仕舞するわけで、あとからどんな裏が暴かれるか楽しみだったが笑い話満載だもんですっかり忘れてしまった。

 しかし、冷静に眺めれば、三人衆が漏らす、実はご重臣の皆様以上に儲けてらっしゃるお方がいて、と、それが案外小平太の近くのヤツでと、なるほどそれと知れてしまってるんなら、そヤツひとりの詰め腹切りとご重臣一同お役御免という事でいかがか?
 果たしてヤツがいか程儲けてどこにカネを動かしたかさっぱり分からないままだが、分からないのは判り切ってる事の裏返し、実はそのカネ全て、ご禁制の抜け荷だかなんだか、殿の江戸表での猟官運動資金に化けてしまった位なところだろう。堀外問題はホンのわいろのワの字に過ぎなかった。
 だが、おかげで幕閣に食い込み、ありがたや隠密の動向まで注進頂いて、運動も成果は明らかじゃないか。ここらが堀活の潮時。お家の安泰に精を出した勘定奉行には切腹を許し藩論を刷新し、ドラ平太にはうだつを上げさせない代わりに江戸に呼んで来た狼藉三人衆の更なる大儲けをごまかす闇の金活奉行で夜の暮らしを満喫させれば西尾藩は永代繁盛間違いなしだ。遊んで騒いで大盛り上がりの影で起こっていたのは大方こんなカラクリだろう。そんな事は気取らせまいと監督が仕組んだ大芝居に余は満足じゃ。
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