三樹夫

女系家族の三樹夫のレビュー・感想・評価

女系家族(1963年製作の映画)
4.1
三代続く女系の老舗問屋の養子婿が死んだ。子供は娘が3人おり遺産相続をめぐり争いが起きるが、実は妾もおり、さらに番頭がとんでもないタヌキジジイで着服や横流しをしているという、出てくる人間のほとんどが碌でもない。数少ない普通の人間は妾の若尾文子と、こいさん(船場言葉で末娘のこと)の高田美和だけで、後はクソみたいなもん。高田美和だけは唯一洋服を着て現代的な価値観の人として強調されている。諸悪の根源は旧家に染みついた権威主義だったり旧態依然とした価値観なので、そこから離れた現代っ子の三女はお嬢感があり世間知らずさはあるものの一番まともに描かれ、ラストもなんだかんだでハッピーエンド感があるのは、不本意とはいえ旧態依然とした家からの解放という着地になっているからだ。
莫大な遺産という金もあるが、面子とか権威も絡んでくる。特に長女が顕著で異常に面子に拘り事態をややこしくしてくる。また妾への仕打ちが酷く、ここら辺で旧家の権威にそまり傲慢になった人間の醜さが出ている。狭い路地にバカでかい車で入っていくシーンは、何の意味もない虚栄心が車で表現されている。

長女は舞の師匠の田宮二郎に相談するが、絶対こいつ碌でもねぇ奴だろと思っていたらその通りだった。例えるなら道鏡とかラスプーチンみたいな感じ。ただ遺産相続にやたら詳しくて、長女は田宮二郎をバックにつけて遺産争いに立ち向かう。三女には叔母が勝手にアドバイスをしてくるというか、叔母は三女の相続した遺産を自分のものにしてやろうと思っており、劇中でもトップクラスの醜怪さを見せもはや妖怪の類だった。
遺産相続の知識が山盛りになっており、ほぇ~勉強になるぅ~と思って観ていたが私には一生縁のない知識であった。劇中使われる言葉は古い大阪弁というか船場言葉で、それにより小気味よい会話になっている。
三樹夫

三樹夫