Jimmy

牢獄のJimmyのレビュー・感想・評価

牢獄(1949年製作の映画)
4.0
イングマール・ベルイマン監督の創作意欲あふれた映画であり、映像面で素晴らしいシーンがたくさんあるが、物語は観客を悩ませる展開の実験的映画でもある。

映画の撮影現場から始まり、撮影所にポール先生なる先日まで精神科に居たという変わった数学の先生が来て「地獄の宣言をする映画を作らないか?」と映画監督に持ちかける。

ポール先生が言うには「いかなる場合でも原爆は禁止。ヒロシマに関わった人間はみんな死刑」、「悪魔の治めるのが地獄。神は不在か、戦いに敗れたのだ」という主張を、映画監督をはじめとする映画関係者は食事中に聞かされる。

すると突然、街中映像が映り、「この映画の監督はイングマール・ベルイマン。タイトルは『牢獄』。撮影監督は……」といった不思議な現実的ナレーション。

さらに「冒頭シーンから6ヶ月経った。ビルギッタが現れる」とナレーション続けて、ビルギッタの物語へ。

ビルギッタは「私は17歳」と言いながら、売春婦をしている。
それを取材に来た記者トマスは、真実がわからず途方にくれる。
ビルギッタは郵便局員と婚約しているが、赤ん坊を産んでしまい、ビルギッタの姉と婚約者の二人が赤ん坊を捨ててしまう。

トマスは妻と二人で自殺しようとするが、妻に瓶で殴られて、倒れる。しかしトマスは妻を殺したと思い込んで警察署に行くが、警官と自宅に行って妻の置手紙で殺していないことが分かる。この警察署でトマスはビルギッタと会う。
ビルギッタはトマスと屋根裏部屋で暮らし始める。

トマスが「呼び鈴を押す手」と「上に伸びる影」は、名シーン!!

また、トマスがビルギッタと一緒に観る活動写真のスラップスティックコメディは内容と死神などの造形が素晴らしい。
これまた名場面。

続いて、ビルギッタが夢見るシーンで、立っている人達の間を歩いて行き、手のひらで輝くダイヤモンドなども美しい。

「水面に映って揺れるトマスの影」や「ナイフが落ちて、壁に窓の影が十字架として映る場面」、「ビルギッタの倒れた部屋に差し込む『光の線』と鳴り響く鐘の音」など映像美が立て続けに出てくる。

映画監督が再登場して「人生は誕生と死の間の冷酷だが魅惑的な弧である」なるセリフは意味深く、更に「神は信用できない。」という神の不在も描く。


後年のベルイマン監督作品の根源となる要素がたくさん盛り込まれた初期作品の佳作である。
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