沼地の亡霊vs国家権力

ハマーフィルムによるオカルトホラー風味のクライム映画。邦題が『幽霊島』で原題が『Night Creatures』だから、無人島での化物オンパレードなお話を予想してましたが、貧民を守るために法を犯す牧師グループのハラハラクライムアクションな感じで、予想以上に楽しい映画でした。

あらすじ…
戦時下で貧富の差の激しい国民たち。まともに食事もできない人々のために、牧師を始めとするグループが高級な酒を密造&密売して手にした金を民に分配していた。その密告を受けた国王軍が捜査を開始。牧師グループと国王軍の水面下での騙し合いが始まる…って感じのお話でした。

『ロード・オブ・ザ・リング』の黒衣の騎士の原型と言われている『エル・ゾンビ』のゾンビテンプル騎士団。それのさらに原型なんじゃないかと思われる髑髏騎士団が沼地を走り回る映像がめちゃカッコイイ。生い茂る木々の枝が風に揺れ、鳥たちの凶暴な鳴き声と狼の遠吠えがどこからともなく聞こえてくる中、満月を真っ暗な雲が覆い隠し訪れる暗闇に浮かび上がるように現れるガイコツの騎士たち。黒の背景に白のガイコツというチープな合成のような演出が彼らの実在性を曖昧にするという役割を果たすだけでなく、幻想的なムードをも醸し出しててめちゃ好き。

でも残念ながら髑髏騎士団はほとんど登場しないんです…。本作はしつこく酒の密売を嗅ぎ回る国王軍と街中に張り巡らされた捜査の目を掻い潜って酒の輸送を試みる牧師グループの騙し合いが本筋なのですが、国の犠牲になる人々を守るという目的のために必死になる牧師グループは自然と応援しちゃうし（しかも牧師がピーターカッシングなんで渋カッコいい！）、そこに髑髏騎士団が絡んできたり、牧師の隠された秘密が明らかになっていったりと次第に全貌が明らかになってくる物語が面白いです。

何が罪なのか、何が罰なのか、何が贖罪なのか。一度でも罪を犯した人はどれだけ善行を積もうが二度と許されることはないのか。そんなことを根底に置きつつ、真の「正しさ」に最大限の賛辞を送る民衆や「帽子を脱ぐ」という敬意の現れには胸が熱くなるし、だからと言って消えることのない行ないは一生ついて回るのだという現実も突きつけられる。

あんまりホラー色は強くないのですが、わかりやすく面白いストーリーとハマーフィルムらしい幻想的なゴシックホラーのような沼地の映像がミックスされた楽しい作品でした。日本版ないのが残念…。しかも一個一個のセリフが長いし字幕流れるの早い！画面の上下関係なく矢継ぎ早に字幕出されても追えないよ。ただでさえ英語弱いのに…(T . T)

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