くるみ

ディパーテッドのくるみのネタバレレビュー・内容・結末

ディパーテッド(2006年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2014/08/16
ガス・ヴァン・サント&マット・デイモン特集3本目。香港の元版映画は未見です。

主演3人のうちの焦点は、やはりマット・デイモン演じるコリンでした。
彼の育て親のフランクは「銃を前にしたら、警察もマフィアも同じだ」とコリンに教えます。
人殺しも辞さずに武器を使うという意味では、そのとおりです。FBIでも中国政府でも、この点において隔てはない。みんな、同じ穴のムジナです。

でも、潜入捜査を命じられたビリーは、二つの組織の違いに自覚的です。子供のときから二つの顔を使い分けてきて警官になったのだから、正道を歩む自分を選んだのでしょう。ゆえに、マフィアに潜入したあとも暴力を使うときは罪の意識を感じるし、警察関係のカウンセラーにかかります。もっとフランクと父子っぽくなるのかなと思ってたけど、マフィアに馴染んでる自身への嫌悪感のほうが大きく、最後まで親近感は抱かなかったようですね。

フランクは、マフィアとしてボストンの街を支配してきました。彼にとって周りの人物は、すべて自分の力を拡大するための手駒です。支配力を増すためには、部下を切り捨てもするしFBIの犬にもなる。目的のために手段を選んでいられなかったから、警察とマフィアを同一視するに至ったのでしょう。

さて、コリンです。
二人と比べると、彼は警察官とマフィアの違いに無自覚だと思いました。警察官になったからには、上を目指したい。そのために、マフィアの父からの情報も使っていく。殺人事件で、身代わりの犯人を挙げるところが酷かったですね。彼は警察官としての倫理観なんか、ぜんぜん持ってないのです。恋人にも、自分の正体なんか黙っておけばいいと思っている。己の才能と環境にあぐらをかいて、利益だけを追求します。だから、父親代わりだったフランクすら殺してしまえる。
彼の無自覚は、終盤までずーっと続きます。ビリーに告発されても自分が悪いという意識がないから、目撃者を始末するし、別れた恋人とまだ縒りを戻せると思っている。
ディグナムに銃を向けられて初めて、自分が何者だったのかを理解します。
こうして、最後には登場人物のほとんどが死んでしまう。銃を前にしたら、みんな同じ穴のムジナだという最初の主張を体現したのです。

でも、私はもう少し先が見たかった。
スパイだらけ、ネズミだらけの国で生きてるにしても、やはり警察組織とマフィアは別です。クイーナン警部もディグナム巡査部長も、コリンとは違い、フランクを逮捕するという意志のもとで、卑怯に貪欲に振る舞っていました。最後は、法のもとに取り締まる側の正義を体現して欲しかった。でないと、マフィアに潜入して苦しみ続けたビリーはまったく報われません。
遺留品の使い方など重要な場面で拙さが目立ったのと、ビリーがマドリンに渡した手紙(たぶんビリーの社会保障番号が書かれたもの)が活かされなかったのも残念でした。
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