ダルマパワー

ファイト・クラブのダルマパワーのネタバレレビュー・内容・結末

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

以下、ネタバレの為、注意。






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これは2回見てこそひとつの作品と思った。二重人格の物語は他にも見たけど、全く違う二人の俳優が一人を演じている映画は他に記憶がない。

主人公がパソコンをカートに入れて、口笛を吹いて運ぶシーンの立ち振舞いはブラピそのものだった。

二人は同時に現実に存在しない、という設定を通す緻密な演出が、人の視線や向き、反応に現れて、2回目に観ると心地いい。

冒頭ノイズかと思って無意識に見過ごしていたものが、実はブラピが映っていたのも斬新で粋な演出。

カラクリは全て映像のなかに隠れていたのに最後まで気づかない。見事にやられたと笑えた。

ものやステータスにまみれた本質的には無価値な人生と、余計なものを捨てて自らのからだ一つで戦いに興じ、痛みをもって生を体感する人生。

それらを並べたときに、どちらが光って見えたか。

単なるサイコ映画に終わらず、人として、特に男としての美学が敷き詰められた作品だったと感じる。

もしこの映像のなかに答えを見いだすのであれば、死の瀬戸際で獣医を目指す事になったビデオ屋のバイトのように、主人公もまた死や窮地を経て裸となり、新たな生き方、理想に生きるんではなかろうかと思う。

男らしい、とは何なのか。

金か、権力か、仕事か、頭の良さか、力か、見た目か、セックスのうまさか。

独特なテンポと角度で繋がれる映像に加え、節々に取り入れられたCGによる超自然的な映像感覚が、作品を独特なタッチで光らせ、ユニークな世界観に仕上げる。

俯瞰的な『僕』のナレーションが自らを客観的に観る感覚を観ている人に植え付け、中毒的に頭に残って離さない。

痛みから目を背けるな。お前は社会のクズだ。

生き方の肥やしとなる作品。

※追記
主人公がバスに一人で乗っているシーンが、ジョーカーのそれに似ていた。

近所を気にしないゴルフ練習、自家製爆弾、小便入りのスープ。ある意味、夢でも見ているかのような、頭の中の映像化。映画。
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