レトーポ試験

自由の代償のレトーポ試験のレビュー・感想・評価

自由の代償(1975年製作の映画)
4.1
部屋の中だと特に人物配置の良さが目立つ。前景を広く使ったり、そこにモノを配置したり。カメラと被写体に一定の距離があってそこのバランスを崩さない。勿論その後に寄るけど。客観的な視点と映画的な演出を切り離さず、そのバランスを保ってるからドラマチックに描きすぎてない。同性愛、異性愛の境界よりも、人間関係や階級に置ける境界をより明確に強く描く。さらに言うならば恋愛における主従関係と搾取。
食事のシーンや不動産の内見をするシーン。「気に入った」とは口にするものの表情に曇りがあったり、服やに行く前の「身綺麗にしよう」に対して「僕はこれでいい。」と答えたり。すれ違いがとてもイタい。
特に大きな出来事、トラブルが起こるわけではなく、淡々と日常を切り取っている。人物の変化、すれ違い、関係性を強かに描く。

悲劇的な終わり。最後の最後でも、彼にカメラは寄らず、遠目から突き放す。自身を含めた少数派に、肯定的で人道的な映像を与えないファスビンダーの冷たさ(褒め)が刺さる…。
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