＜涼味満点＞
魚たちの「トイストーリー」
圧倒的な質と量で描く海と魚。本作はこれが主役。とにかくため息が出る美しさだ。暑い夜は、この映像だけボンヤリ見るのもいい。
とはいえそこはピクサー、ちゃんと見応えのあるドラマが用意されている。主人公は自信の無い父親マーリン。彼が成長しながら息子ニモに辿り着くまでの旅であり、同時に内面で子離れをしていく。物理的に近づき、精神的には離れていく、相反する二つのドラマが並行していくのが面白い。
ニモの視点からみれば、
・些細な争いで離れてしまった未知の場所から本来居るべき場所へ戻る・仲間に助けてもらう・恐怖の対象は乱暴な人間の子供、と笑ってしまう程「トイストーリー」と同じだ。でもそれがいい。慣れ親しんだプロットを見事に完コピしてくれる（もはや様式美な）それは、既視感に勝るよな。
唯一欠点を上げれば、マーリンのサイドキック＜ドリー＞の使い捨て感。ここはちょっとピクサーらしくない。まあそれも１３年後に回収してくれるのだが。
