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パリ、18区、夜。のROYのレビュー・感想・評価

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)
4.0
私の隣に彼らがいた。彼らはパリの夜に生き、愛し合い、ときおり人を殺した。

女優志願の少女と、老女連続殺人犯。出会うはずのない二人を、運命が近づけた。

『Internet Archive』で鑑賞

■INTRODUCTION
1987年に実際に起こった老女連続殺人事件を中心に、パリのなかでも人種と社会の坩堝である18区に生きる人々のそれぞれの孤独を描きだす群像劇。

■ABOUT
若い娘ダイガはオンボロ車に乗って、女優をめざしリトアニアからパリにやってくる。故郷で知り合ったプロデューサーを訪ねるも、体よく追い払われ、パリに住む叔母のミナの紹介で18区の安ホテルで清掃をしながら下宿することに。そのホテルにはカミーユというゲイの青年が愛人ラファエルと一緒に暮らしていた。アフリカ系移民のカミーユは精悍な肉体を売り物にゲイ・クラブでダンサーをしている。やがて老女を狙った連続殺人事件の犠牲者が出る。昼も夜も休まずに人々が蠢いているパリ18区で様々な人生が交差する。(アンスティチュ・フランセ)

■NOTE I(チラシより)
パリの夜明け。遥かリトアニアから一人の少女が、おんぼろ車を走らせてやって来る。なけなしの金と、いっぱいの煙草と、たった2件の電話番号を鞄に詰めて。彼女の名はダイガ、パリで女優になることを夢見て、すべてを処分して長い道のりを旅してきたのだ。ダイガが身を寄せるのは18区の安ホテル。そこには毎夜ナイトクラブに出入りするカミーユという女の名を持つゲイの青年がラファエルという愛人と暮していた。しかし、フランス中を戦慄させている老女連続人事件が彼らの仕業だとは誰も知らない。ただ一人ダイガだけが、ふとした偶然から彼らの正体を知る最初の人物となる・・・ 。異邦人の少女も殺人者も等しく包み込む都市の迷宮。『パリ、18区、夜』は、 18区の夜という限られた世界の独特な雰囲気を、美しいブルートーンの映像と徹底したクールなまなざして描き出し、世界中のジャーナリストや映画人に深い感銘を与えた。

◯実在の殺人事件を馬に、洗練された都市のドラマが生まれた!
脚本は1987年にパリで実際に起きた老女連続殺人事件がベースになっている。しかし監督のクレール・ドゥニは、21人もの老女が犠性になったこの事件をことさらドラマティックに描くことは避け、淡々と人々の素顔をスケッチしている。夜の社交のつけを老女から奪った金で凌いでいる力ミーユ、彼の兄テオと妻のセナ(ベアトリス・ダル)、そしてカミーユの人生を一瞬横切っていくダイガ。彼ら一人一人を一本のより糸としながら、複雑な現代の都市の権が嫌り成されていく。その洗練された演出によって、かつてドゥニが助監督を務めたジム・ジャームッシュやヴィム・ヴェンダースの描く都市にも通じる、乾いた情漂う現代の都市のドラマが生まれた。

◯現代女性の共感を呼ぶヒロイン、ダイガ。
スラブ的な美独の女優カテリーナ・ゴルベワが演じるダイガは、物憂げな表情の中に強い情熱を秘め、時として驚くほど大胆な行動に出る。自分をパリに誘ったフランス人監督が、いい加減な男だったことを悟った時、あるいはカミーユが恐ろしい殺人犯であることを知った時の彼女の反応は非常に痛快である。世間の常識とは無縁の価値観で生きるダイガは、都会に生きる現代の女の子たちの新鮮な共感を呼ぶだろう。

◯眠らない夜の妖しい映像、そして美しく物悲しいサウンド。
優美なモンマルトルの丘からアフリカやアラブ系移民の多いバルベス地区、そしてピガールの大歓楽街へと広がるパリ18区。撮影のアニエス・ゴダールは、カミーユが半裸で踊る妖しいゲイ・クラブやエスニックなライブハウス、うらぶれたホテルのたたずまい、鮮やかなネオンに染まる18区の街並みを艶やかな映像で映し出す。音楽はジャン=ルイ・ミュラとマルチニックのバンド、カリ。彼らのサウンドは、眠らない街のけだるく漂うようなムードを一層高めている。

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「この映画は私の最高のお気に入り。カンヌで観た中でも一番好きな作品です」ロマーヌ・ボーランジェ

「地球があと24時間でなくなるとしたら、最後に観る映画の一本は間違いなくこの作品である」ヴィム・ヴェンダース

3/22(土)よりロードショー!
俳優座トーキーナイト

■NOTE II
『Senses of Cinema』の記事を抄訳してみました。(https://note.com/roy1999/n/n193cc3ca5d0b)
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