Tully

許されざる者のTullyのネタバレレビュー・内容・結末

許されざる者(1992年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

イーストウッドの映画人生の恩師でもあり、師匠でもある映画監督ドン・シーゲルとセルジオ・レオーネに捧げた作品としても有名。19世紀末の西部。西部劇の形を借りてはいるが西部劇ではない、これはやはり一人の男の人生の選択を描くドラマ圧倒的な銃の力で相手をねじ伏せる正義の暴力への疑問を提示し、ガンマンの老醜を描く事で、自らの西部劇のキャリアにも訣別を告げているかのようではないか。「許されざる者」は、殺しは不毛であると説く。そこには善も悪もない。監督は云う。「これは暴力の本性と、それが及ぼす影響についてのフィルムである」。ヒロイズムも、その裏返しであるアンチヒロイズムも放棄した西部劇。ジャンルの矩が動揺する。築き上げられてきた強きアメリカという憧憬への「罰」という意味なのか、自らの国の矛盾と不条理に対して、イーストウッドが投げかける問いは酷く重い、そして哀しい。しかしこの作品で心を打たれるのは、彼が包み隠さず人間の弱さや愚かさを描いているからだろう。中盤の展開がもたつくがクライマックスはやはり迫力がある、ラストシーンは非常に感動的だ。若い頃は、何も考えず、動くものは女でも子供でも撃ち殺した、と語るウィリアム・マーニーは、かって列車強盗などで名を馳せた伝説的なアウトローだった。老いたガンマンが次第に狂気を孕んで”伝説の男”として変貌してゆく様を演じるクリント・イーストウッドに身震いするような興奮と感動を味わえる作品となっている。少し画面が暗かった。従来の西部劇が持つ痛快さに加えて人の命の尊さというものをあらためて感じさせてくれる、そんな逸品に仕上がっている。いくつになろうが、若かろうが年を取っていようが、自分の人生に大切なものは何があろうが守らなければいけないと言うことを教えてくれる作品です。
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