風来坊

悪魔が来りて笛を吹くの風来坊のレビュー・感想・評価

悪魔が来りて笛を吹く(1979年製作の映画)
3.0
元子爵、椿家の乱れた人間関係によって生まれた兄妹の起こす連続殺人事件を解決する金田一耕肋の活躍を描く。

続いて西田敏行さんが金田一耕助に扮する本作を鑑賞。金田一耕助の出で立ちは原作準拠の和装姿でやっぱりコレだよね〜と落ち着きます。
「八つ墓村」もそうだったですが本作の物語も新聞を賑わせた実際に起きた事件からの着想を基にしており当該の事件を調べて観ると感慨深くなります。

やっぱり西田敏行さんが金田一を演じるとコミカルさが良くも悪くも出てしまう。
ただ人当たりが良くお茶目なところもあり優しい金田一像はは個人的にはかなり好き。
日本の田舎を舞台にロケーションが広いのが魅力と思っている金田一シリーズ。原作自体がロケーションが狭く横溝正史さんぽくなく金田一シリーズでは異端。ミステリーの定番の密室殺人がテーマなのもの横溝さんなりのアンサーなのかなと個人的な解釈。

梅宮辰夫さんが出て来るとなんか一転してヤクザ映画かみたいな雰囲気になる(笑)
昔の映画なので当然ですがキャストが若くて感慨深い。西田敏行さんはイメージが全く変わらないけど(笑)
美彌子役の斉藤とも子さんが可愛い、昔のアイドルチックな髪型が似合う。これが映画デビュー作で可愛いし、演技は大味だけどそう悪く無いのにイマイチ大スターにはなれなかった不遇は残念…。
若手時代の中村雅俊さんも出演。原作の横溝正史さんや角川春樹さんもカメオ出演。この2人はホントに出たがりよね(笑)

この後に「戦国自衛隊」を撮る事になる斎藤光正監督の角川さんに引き抜かれた作品でもあるが、個人的には斎藤さんは日活時代の女性を撮る事に長けた秀でた監督のイメージだったので良くも悪くも角川さんに飼い慣らされた印象が私の中にはあって良さを抑圧された感じで残念…。

まあ池波志乃さん演じるキャラのエキセントリックさなど相変わらず女性を撮るのは上手いなぁというのは変わらず。
今は家族という物が希薄な世の中になりましたが、昔は良くも悪くも複雑な家系と戦争後の混乱が事件をより複雑化している。

何と言うか全体的にチグハグな感じが否めない…。金田一の活躍を描きたいのか美彌子の悲哀を描きたいのか焦点が定まっておらず…金田一にしても活躍してるのかどうか優秀なのか分かりづらい…。
やっぱり原作の持つ怪奇さと子爵という庶民には遠いところのゴシックさを出し切れていません…。

金田一と美彌子の甘酸っぱい関係も角川映画的な演出だけど要らない(笑)
感情的な音楽は良かった。切れ者で神がかり的な金田一にはせず、人が良く普通の人な感じにしたのは取っ付き安かったが、ミステリーとして無駄に長く肝心な種明かしもダラダラ…。テンポも今ひとつで面白味に欠け、金田一映画ブームの下火のキッカケの作品という声も分かる気がしました…。

まとめの一言
「複雑な家庭による愛憎劇」
風来坊

風来坊