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モダン・タイムスのpicaruのレビュー・感想・評価

モダン・タイムス(1936年製作の映画)
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『Modern Times』

チャップリンの代表作のひとつ。
約5年ぶりに鑑賞。

機械が労働力となり、人間は機械化しつつある資本主義をテーマに、チャップリンならではの皮肉を交えたユーモアが存分に発揮されている傑作。
これぞ、コメディの教科書。

あいにく、本作について語る言葉を持ち合わせていない。
サイレント映画だから?
もちろん、それもある。
加えて、丁寧に語ろうとすればするほど、かえって作品を陳腐なものにしてしまうような気がするんだ。
チャップリンの映画には、言葉を寄せ付けない美しさがある。

(……と言いつつ少しだけお話させてもらうと)
すごく胸を打ったセリフがあって、それは、逃亡中のチャップリンとヒロインの会話。

“Can you imagine us in a little home like that?”

歩き疲れてしゃがみ込んだ二人。
たまたま通りかかった華やかな家の前で、「あんな素敵な家に住めたらいいなぁ」とチャップリンが呟く。

私はこの一言に深く感動してしまった。
サイレント映画のため、本編に現れる文字のほとんどが各場面のタイトルのような言葉だ。
ただ、この瞬間だけは主人公の本音が漏らされた。
逆に言うと、チャップリンの表現力があればセリフなどたったひとつで十分だということだ。
特別難しい言葉じゃない。
今もどこかでだれかが思い描いているような想像。
そんな一言に、いろんな感情が凝縮され、それまでのいくつものシーンが残像として現れ、自分の耳に届く頃には響き方がまったく変わっている。
チャップリンの魔法にかけられたなんとも愛おしいセリフだった。
そして、このセリフはラストシーンの会話に繋がっている希望の欠片でもあった。

時代が移り変わっても色褪せない名作がある。
『Modern Times』はこれからもたくさんの人々に笑いと、感動と、夢を与え続けるだろう。
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