似太郎

ワールド・アパートメント・ホラーの似太郎のレビュー・感想・評価

3.7
【ここがヘンだよ大友克洋】

安っぽいVシネのような画面なのに演出がアニメ的でワチャワチャした雰囲気のある珍作。主演の田中博樹(現・SABU)の強がっているのにオドオドしたヤクザが情けなく、外国人の住むオンボロアパートを取り仕切るバブル期の典型的な「日本人像」がシニカルに描かれている。

観ている内になぜ『AKIRA』の後にこれを?という疑問符が。元々大友克洋の作風が実写映画的でアニメっぽくないから「俺でも実写映画撮れるぞー!」という勢いに任せて作った感じがあるけど、結果見事に失敗してしまったという始末…。

原作は今敏。撮影が篠田昇で、助監督があの緒方明ってのがまたスゴイ面子。大友克洋は漫画家としては凄いけどアニメや実写に手を出すとどうも「……。」な違和感が残る所もある。
内容的には山本政志の『ロビンソンの庭』や岩井俊二の『スワロウテイル』みたいな部分も無くはないけど演出がベタというか寒いコントみたいで中途半端なのだよ。(笑)

ただ、全くもって酷い駄作とは思わないし「よく分からんエスニックな珍味www」といったアジア人的気色悪さのあるホラー・コメディみたいな魅力があるのも確かで少なくともオダギリジョー主演『蟲師』ほど滑ってはいなかった気がする。むしろこっちが大友の本性ではないかな?

同時期の『老人Z』のようなフォロワーすらいないから、当然アンチもいないという無残な作品で「このアパートにオバケが出るんだよ〜」みたいな迷信を信じ込むドヤッとした日本人ヤクザの一太(田中博樹)が「日本人は白人だ!」という誇大妄想を抱いてるうちに段々バチが当たる教訓話のようにも思えてくるカルトムービー。映画としてはつまらないけど退屈させない吸引力はあるのでオマケで3.7点を献上。
似太郎

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