あまのうずめ

マンダレイのあまのうずめのレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
3.6
1933年、グレースと父親はギャング団と共にドッグヴィルから南に向かいアラバマを走り、車を停めていると、鞭に打たれるティモシーを助けてと女が車の窓を叩く。父親が止めるのもきかずグレースは鞭打ちを止めさせ、亡くなった女主人に代わり黒人たちの新たな契約書を作り顧問として数人の父親の部下と共に残ることにした。


▶︎ラース・フォン・トリアー監督の「機会の土地アメリカ三部作」の2作目で、『ドッグヴィル』の続編。グレースはニコール・キッドマンからロン・ハワードの娘でもあるブライス・ダラス・ハワードに代わり、父親役もウィレム・デフォーに代わった。

前作の黒い床に描いた白線は白い床に黒線に代わったが、少しのセットで演じられるのは同じ。今作では8章からなり、前作と同じくジョン・ハートのナレーションが入る。ナレーションが半分以上を占めていて芝居はその補完となってしまい、まるで箇条書きで観ているかのようで残念だった。

前作での反省があったのか役者への演出が不十分で演者が役を生きていない。ただグレースがキチンと識別出来ていない設定なので仕方がないのかも知れないが。

理想主義者について何作か振りに言及し、傲慢さについては前作を踏襲。奴隷制度、自由、民主主義についても描かれている。ラストの黒人のセリフが印象的で、父親の偏屈が正しかった結果となり、グレースが恣意的なだけだった。自由には責任が伴うことを福沢諭吉は説いていたのにな。

またエンディング・テーマはスライドショーと共にデヴィッド・ボウイの "Young Americans" 。辛いで片付けられない黒人の歴史的スナップに心が締め付けられた。

三部作の3作目は無期限延期となっているが、再開を期待する。