「ドッグヴィル」に続くラース・フォン・トリアーによるアメリカ三部作の二作目。
ドッグヴィルを離れたグレースが訪れた農園では奴隷制廃止前のような生活様式が敷かれており、そこに民主主義の共同体を築こうと奔走する物語です。
冒頭から主人公は傲慢な印象なのですが、そこに悪意が見られずむしろ理想を追っていることで滑稽さが増すという強烈な皮肉で、それが空回りの様相を呈する終盤はブラックユーモアの極みでした。
いくつも問いを投げかけてくるようだった前作に比べると、１つの答えを突きつけて来る今作はメッセージが明快な分やや深みに欠ける印象でしたが、空間の特殊さがもはや気にならない語りの巧みさは見事でした。
