けーはち

クィーンのけーはちのレビュー・感想・評価

クィーン(2006年製作の映画)
3.5
ダイアナ妃は王室にとって厄介な異物だったが、恋多き破天荒な女ゆえ国民に愛され、悲劇のヒロインのまま死んだ。女王が通例を超えて彼女の死に何かしら反応を取らないと、王室への批判は強まり国民は離れていくという一大事!──だったかもしれない。そんなダイアナ妃の事故死の一連の騒動に英国女王エリザベスⅡ世(ヘレン・ミレン)が葛藤する姿を描く。

普段感情は胸に仕舞ってツンと構えた女王が、王族の気晴らしで鹿狩りで撃たれそうな鹿に接した複雑な表情が深く心を掴む。また、労働党の左派なブレア首相が人気取りのためにダイアナ妃の騒動を利用しようとするが、一連の出来事を通じてすっかり心情が女王寄りになってしまったくだりは面白い。重き責任を負った者こそ主義主張を超えて長らく「王」としての場に置かれる重さが分かるのだ。それにしても、英国映画で見られる王室いじりは、いつも敬愛と冷笑のいいバランスが取れている。日本の皇室いじりもかくありたい。