Omizu

醜聞(スキャンダル)のOmizuのレビュー・感想・評価

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)
3.4
【1950年キネマ旬報日本映画ベストテン 第6位】
黒澤明が『羅生門』と同年に手掛けた社会派ドラマ。黒澤作品常連の三船敏郎、志村喬、そして"李香蘭"としても知られる山口淑子が主演している。

三船敏郎演じる画家の青江、山口淑子演じる歌姫西條を主人公としてジャーナリズムの暴走を描く、と思いきや途中から志村喬演じる貧乏弁護士蛭田の良心をめぐる物語へと変わっていく。

前半はスピード感と切れ味に溢れ非常に楽しいのだが後半で失速。ヒューマニズム作家である黒澤明らしいと言えなくもないのだが、前半のスピード感が失われひたすら叙情的な演出に陥っていくのがもったいない。

三船敏郎、山口淑子という俳優の美しさは言うまでもない。三船は知っていたが山口淑子ってこんなにキレイなんだと初めて知った。歌姫としての立場上裁判に踏み込めないもどかしさを自然に演じていて素晴らしい。

青江の芸術家らしい率直さと爽快さも気持ちよく、そこに現われた蛭田の卑俗さが際立つ。また根拠なく醜聞を広めた大衆紙の社長堀を演じた小沢栄も非常に憎々しく演じていていい。

良くも悪くも黒澤明という感じ。前半と後半でテイストが変わるのを受け入れられるかどうかで評価が変わってくるのかな。

僕としてはいい意味で黒澤明らしくない爽快感とスピード感のあった前半がすごく好きだったのでがっかり。もちろん最後の後味や志村喬はさすがなのだが…
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