【第76回カンヌ映画祭 ある視点部門New Voice賞】
ラッパー出身のバロジ監督による長編デビュー作。カンヌ映画祭ある視点部門に出品され受賞、シッチェス映画祭監督賞にも輝いた。
これは傑作。長編デビュー作とは思えない洗練された画面に驚かされる。アフリカの因習をめぐる四人の人物をファンタスティックに描いている。
途中挿入されるアフリカ版ヘンゼルとグレーテルがよかった。闇の中燃える案山子や儀式の場面など強烈に印象に残るシーンも多い。
カンヌとシッチェスに出品された、という事実だけでどういう作風かは分かるだろうが、なるほどこれは新しい才能だ。
アフリカにおける因習を戯画化して描きつつもリスペクトの視線も忘れない。彼らには彼らの考えがあってそうなっているのだ。主人公の母親をめぐる描写がリアルでよかったな。
少々異文化趣味が気にならなくもないが、美しい映像に魅せられる。四人の人物にフォーカスした章立てもよかった。今年のファンタ系映画の中では今のところナンバーワン。この監督の今後が楽しみだ。