こたつむり

ロスト・ハイウェイのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
4.0
♪止まらない愛しさ溢れて、連れ出してRUNNAWAY。

デヴィッド・リンチ監督の作品の中で。
僕が一番好きなのは『ツイン・ピークス』なのですが、そのノウハウを基に作られたからなのか、難し過ぎず、易し過ぎず、ちょうと良い按配の物語でした。とは言え、リンチ監督が手掛けた作品ですからね。当然のように“解釈に悩む演出”は散見されました。

でも、物語の骨格はいたって単純。
端的に言えば“覚めない悪夢”なのです。
だから、枝葉が込み合っていても、そのまま受け止めれば良く。「蜘蛛は母性のメタファー」とか「赤色は現実の印」とか…隠された“意味”を探すのではなく、生のままに“感覚”で受け止めれば良いと思うのです。何しろ、夢に整合性を求めるのはナンセンスですからね。

しかも、本作が巧みなのは。
“覚めない悪夢”を表現するにあたって、いきなり小人が踊りだしたり、奇形の赤ん坊が泣き出したり…というような“ぶっ飛んだ場面”ではなく、シームレスで“何かが変化していく”こと。確かに夢の中では、よくある話ですよね。

そして、それを活かすのが。
センスの良さが弾けている数々の挿入曲。
『ツイン・ピークス』のときにも思ったのですが、リンチ監督は音楽に拘りがあるのでしょうね。サントラが欲しいくらいに粒揃いなのです。ちなみに参加しているミュージシャンはデヴィッド・ボウイやスマッシング・パンプキンズ、マリリン・マンソン。うひ。脳汁トロけ出すゥ。

まあ、そんなわけで。
興業的には失敗した作品ですが。
リンチ監督入門編としては最適な作品。
“答え探し”をすると袋小路に陥って窮屈な思いをしますので、希釈せずに飲みこむことをお薦めします。そうすれば、じわっと足元から“悪夢”が侵食してきますので、是非とも居心地の悪い感覚に身を委ねてみてください。

ちなみにリンチ監督は。
エロティックな雰囲気を醸し出すのも上手いですね。この辺りが他のカルト映画とは一線を画くところ。そういう視点で楽しむのもアリだと思います。パトリシア・アークエットの当時29歳のスタイルの良い肢体を…げふん。げふん。
こたつむり

こたつむり