たかぽん

ロスト・ハイウェイのたかぽんのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

この映画、演出編集のセンスが素晴らしいです。
サウンドデザインもリンチが自ら行っているらしい。
デヴィッド・リンチはこの作品を作る上でO・J・シンプソン事件から着想を得たようです。
不可解な部分も多い事件なのだがこの作品も一筋縄ではいかない怪作。
豊かな映像表現を楽しみながら多面的な解釈を楽しむ作品でしょうね。


時系列通りに進まない展開

登場人物が本当にその人物自身なのか観客は困惑してしまうような演出方法。
ミステリーマン(謎の男)の家のシーン。
小さな小屋が燃えているが逆送り再生。
そしてミステリーマンが小屋の中から出てくる。
この男は現実にはいない存在なのでしょう。
彼はこの映画におけるトリックスターといったところ。

途中からピーターという青年がフレッドに代わり出てきます。
彼は妻殺しの疑いで投獄されたフレッドの独房になぜか入れ替わります。
フレッドが独房の中で見る妄想の中でまた道を走るイメージが出てきてその先にはピーターが。

あとは暗闇の中、鏡の中の自分を見る行為をフレッドとピーターふたりともしている。
ピーターの場合、鏡を見た時、額の傷が消えてしまっている。
この瞬間に時系列が移動していると考えます。
もしかするとフレッドの場合もそうだったのかもしれない・・・。
ある日彼の両親から話があると言われる。その前の晩のことを覚えているかと聞かれ彼は答えることができない。
あの夜とはアンディを殺害した日のことなのでしょうか。

アリスはピーターとの情事の後、立ち去る。
ピーターは起き上がるとフレッドになってしまっている。
フレッドがロラントの泊まるモーテルの部屋に訪れる前にロラントはレニーと思わしき女と一緒にいました。
このあたりが時間軸がこんがらがっているところ。

アンディのパーティーから帰って来た時に窓に懐中電灯のような光が見える。誰かが家に潜入していたのでしょうか。
しかしビデオテープを見ると妻をバラバラにしているフレッドの姿が見える。
その前にフレッドは鏡の自分を見ている。
ピーターと同様に考えるのであれば時系列がここで移動しているのか。

カットアップの手法
ダダイズムから生まれそれをブライオン・ガイシンが発展させウィリアム・バロウズが広めたカットアップ技法。
その後の芸術への大きな影響を与えました。
このロスト・ハイウェイもカットアップのような時系列。
これを普通の映画のような時系列に並べただけなら本当に普通のドラマになってしまいますが複雑怪奇と言ってもいいこの作品の時系列だと印象深い作品となっています。
もちろん細かい部分での演出の効果がこの作品の魅力を支えているのは言うまでもありません。

音楽
デヴィッド・リンチ作品では印象深い音楽が効果的に使われる(イレイザーヘッドの"In Heaven"など)。
この作品では往年の名曲(ルー・リードなど)や当時の若手の曲(Nine Inch Nails、The Smashing Pumpkins、Marilyn Manson、Rammsteinなど!)を積極的に使っています。

まとめ
考えるよりかは感じる作品かなと僕は思います。
演出の魅力的なポイントは非常に多いでしょう!
マニア向きな作品ですが若い人なら面白いと感じる人は多いんじゃないかな?

好奇心旺盛な人にオススメです!
たかぽん

たかぽん