りょうすけ

ヒューゴの不思議な発明のりょうすけのレビュー・感想・評価

ヒューゴの不思議な発明(2011年製作の映画)
3.5
「ヒューゴの不思議な発明」

本作は、マーティン・スコセッシが2011年に監督したファンタジー映画であり、彼にとって初めてのデジタルかつ3Dで制作された作品でもある。

今までの彼の作風とは異なり、全年齢対象の作品であるにも関わらず、「死ぬまでに観たい1001本」の1本として掲載されているのが些か疑問の作品だった。今回はこの切り口から本作についての感想を述べていこうと思う。

本作を鑑賞したことがある人は、本作のテーマが「映画愛」であることに異論はないと思う。「月世界旅行」で有名なジョルジュ・メリエスを題材にしたフィクションであり、彼が映画界に残した多大なる業績を賞賛する映画でもある。

昨年「バビロン」や「フェイブルマンズ」など、映画の映画がいくつか公開されたが、本作も間違いなくその系譜の作品である。

スコセッシを含む多くの映画人を代表して本作に登場するタバール教授が書いた本の中で、紹介されている映画たち、このうちの数本は「死ぬまでに〜」に掲載されている作品でもある。

そこで「死ぬまでに〜」に本作が掲載された理由として以下の3点を考えた。

1.映画愛についての映画であること

2.本の中で紹介されている映画が紹介される作品であったこと

3.古典映画についての映画にも関わらず、3Dデジタルという最先端技術を用いて撮影されているところがユニークであったこと

もちろん、本作は内容も素晴らしいのである。序盤は不慮の事故で孤児となってしまった少年が駅で時計のねじ巻きをしながらひっそりと暮らしているという「ノートルダムの鐘」のカジモドのような生活をしており、文学を趣味とする少女との出会いから彼の人生が大きく変わる様を描いた作品と思いきや、後半から映画や人生讃歌、そして戦争に対する批判など、様々な要素が含まれている。

偏屈爺さんが過去の自分と向き合い、本当の自分を取り戻す様には普通に感動したし、何より本作の映像美には圧倒された。

CGをあまり使わずに表現することがスコセッシの流儀だと思っていたので、その意外性が功を奏したのか、すごく味を感じた。

彼の泥臭いヒューマンドラマももちろん大好きだが、こういう映画も撮れるんだと思うと、彼に対する見方も少し変わる気がする。

今回は2Dで鑑賞したが、実家にはまだ3Dを鑑賞できる機材もあるので、3D版のブルーレイが手に入ったら3D版で再鑑賞したいと思う。
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