オッドボール「まだよ、まだよ~・・・」(吹替:宍戸錠)
名優ドナルド・サザーランド追悼。享年88歳。
サザーランドと言えばキーファーよりもドナルドの世代です。
本作は私にD・サザーランドを強烈に印象付けた作品。
久々に観ましたがやっぱり傑作。理屈抜きの面白さです。
主役はクリント・イーストウッドながら個性派共演陣の魅力がたっぷりの作品で、その筆頭がシャーマン3両の戦車隊を率いる“オッドボール”ことサザーランド(当時35歳)。
全キャラ中ダントツの存在感のサザーランドはイーストウッドを完全に食ってます。
原題は“Kelly's Heroes”(ケーリー率いる英雄たち)。
邦題は『特攻大作戦』のテリー・サバラスとサザーランドが出てるからという安易な命名か? ちなみに『特攻~』の原題も邦題とは全く違い“The Dirty Dozen”(汚れた12人)。
とはいえ、『特攻~』ではほぼザコキャラだったこの2人、3年後の本作では主役級に昇格。
本作は第二次大戦ノルマンディー上陸後のフランスが舞台の戦争アクション・コメディ。
連合軍元中尉で今は二等兵のケーリー(イーストウッド)はドイツ軍占領下の小さな町に隠された大量の金の延べ棒を横取りするため、3日間の休暇を利用し小隊仲間を巻き込んで軍務逸脱の強奪計画を強行。
今回観たのはかつて発売を待ちに待ったTV吹替版収録のブルーレイ。
当時40歳で最もイケメンの頃(?)のイーストウッド(山田康夫)。
『特攻~』ではチームワーク完全無視のサイコキャラだったテリー・サバラス(大平徹)が本作では一番まともで頼れる軍曹。『刑事コジャック』はこの3年後。
サザーランドの声はなんと宍戸錠、これが奇跡的にハマってます。
他にも守銭奴会計係のドン・リックルズ(永井一郎)、『ロックフォードの事件メモ』の“エンジェル”ことスチュワート・マーゴリン(大塚周夫)、やはり傑作コメディ『地上最大の脱出作戦』(原題は“What Did You Do in the War, Daddy?”=パパは戦争中はなにしてたの?)でもほぼ同じ役柄だったキャロル・オコナー(富田耕生)、この頃はまだハリーの無いディーン・スタントン(納谷六朗)など役者も声優も曲者揃い。
さらに、ドイツ軍戦車兵は『大脱走』でアッテンボローを逮捕したゲシュタポ(カール=オットー・アルベルティ)。
TV吹替パートと字幕パートは半々ですが、それぞれを見慣れてるせいか全く違和感ナシ。
また、本作をコメディと侮るなかれ、CG皆無の戦車・飛行機・火薬大量投入の戦闘シーンは大迫力。
監督のブライアン・G・ハットンとイーストウッドは『荒鷲の要塞』でも組んでますがこちらの方が断然上。
ちなみに本作は登場する数々の兵器とそのディテールがマニアを唸らせた作品でもあり、初見当時タミヤの1/35プラモに凝ってた私も冒頭のタイガーⅠ型(改造ですが上出来)登場からテンション爆上がりでした。
音楽はラロ・シフリン。国内サントラLPは存在せず、高校の頃に輸入盤を探して入手。
主題歌の“バーニング・ブリッジズ”は今も頭の中でエンドレス再生。
線路上を走るシャーマン部隊のBGMは“線路は続くよどこまでも”。
“タイガー・タンク”という曲はタランティーノが『イングロリアル・バスターズ』でパクッてました。
マカロニ・ウェスタンのパロディシーンではモリコーネ風サウンドで盛り上げますが、このシーンで一番ノリノリなのもサザーランド。
今ではまず製作されないノリの戦争アクションですが、戦争なんてバカバカしくて命かけてやってられるか!と笑い飛ばすと同時に戦場の容赦の無さも見せつけてくれます。
スピルバーグも大好きな映画だとか。
いつもの1.5倍の長文になってしまいました。
ドナルド・サザーランドに合掌。