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お早ようのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
3.5
小津安二郎監督の50作目(カラー作品としては「彼岸花」に続いて2本目)。
郊外の新興住宅地を舞台に子供たちや噂話に振り回される大人たちをコメディタッチで描いたホーム・ドラマ。
今回はデジタル・リマスター版を鑑賞。
(1959、1時間34分)

荒川沿いの新興住宅地。こじんまりとした同じような建売住宅が数軒隣り合うように建っている。
子どもたちは一緒に仲良く学校に通い、行き帰りの土手でオナラを上手にする遊びに興じている。テレビの相撲中継にも夢中で、勉強をサボってみんなでテレビのある夫婦の家に入り浸る。
母親たちはあれこれと勘ぐった噂話をし、会計が届けたはずの婦人会費が部長に渡っていないことを巡るいざこざや押し売り騒動などに振り回される。
林家の息子2人がテレビを買ってくれと両親に何度もうるさくねだるが聞き入れてもらえず、父親から、"余計なおしゃべりをするんじゃない"と叱られる。
すると、子どもは"大人だって、お早ようとか…とか余計なこと"を言うじゃないか"と屁理屈を言い、家でも学校でも口を利かないと決める。
親たちはいつまで続くかな、とストライキ作戦の行方を見守っる…。

~①林家~
・夫、敬太郎(笠智衆) :定年が近い。頑固。
・妻、民子(三宅邦子):節子の姉。婦人会の会計。
・長男、実(設楽幸嗣) :中学生。テレビを買ってもらえず、口をきかない作戦にでる。
・次男、勇:(島津雅彦):小学生。兄の真似をし、いつも一緒の行動をとる。
・妻の妹、有田節子(久我美子) : 会社勤めの若い女性。姉の家に居候。平一郎に気がある。

~②福井家~
・青年、平一郎(佐田啓二):失業中。英語の翻訳のアルバイトをしている。節子に気がある。
・姉、福井加代子(沢村貞子):自動車の営業担当。民子の同窓。

~③林家の隣人1-原口家- ~
・妻、きく江(杉村春子):婦人会の部長。
・母、みつ江(三好栄子):助産婦。押売りを追っ払う。預かった町内会費を娘に渡し忘れる。
・夫、辰造(田中春男):婿養子。
・息子、幸造(白田肇): 中学生。パンツを汚してばかりで、叱られっぱなし。

~④林家の隣人2-大久保家- ~
・妻、しげ(高橋とよ):夫のおならに3度反応する。
・夫、善之助(竹田法一) :ガス会社勤務。おならの名人。
・息子、善一(藤木満寿夫) :中学生。

~⑤林家の隣人3-富沢家- ~
・夫、汎(東野英治郎):定年退職して職探し中。酒を飲み過ぎる。
・妻、とよ子(長岡輝子)

~⑥林家の隣人4-丸山家- ~
・夫、明(大泉滉) : 唯一のテレビ所有者。
・妻、みどり(泉京子) :派手な感じで、近所の主婦たちから白い眼で見られている。

~⑦その他~
・実の担任(須賀不二夫 )
・押売り男(殿山泰司)
・防犯ベルを売る男(佐竹明夫)

「おかあさん、パンツを出しておくれよ~」

「一億総白痴」(大宅壮一)

劇中の会話にあるように、大人たちが挨拶に使っている一見無駄なように見える言葉も、実は社会の潤滑油になっていて、無駄も大事だということだ。
それでも、しっかり言わないといけない肝心な時もあるのだが、駅のプラットホームで出会った若い二人が挨拶を交わすラスト・シーンは相も変わらずお天気の話ばかりで、ユーモアを感じる。
でも、おばさんたちのあらぬ(根拠のない)噂話は、他人を村八分にする危険をはらむので、曖昧なままにしておくと困りますね。
ところで、駄々を捏ねる子どもとそれをある程度許容する日本の親の姿は、駄々を許さない欧米人には珍しいらしい(ヴィム・ヴェンダース監督が「東京画」で興味深く撮っている)。
役者では、嫌みな杉村春子とそんな娘への批判(悪口)をブツブツ呟く(独り言を言う)三好栄子が印象に残る。
なお、子どもたちの「オナラ」遊びは私にはどうもしっくりこない。
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