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コッポラの胡蝶の夢のakrutmのレビュー・感想・評価

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)
2.7
落雷によって若返った男性の人生を描いた、ルーマニアの著名な宗教学・哲学者で作家であるミルチャ・エリアーデの小説「Youth Without Youth」を、フランシス・フォード・コッポラ監督が映画化した作品。70歳の言語学者ドミニクは、雷に打たれて瀕死になるが、30代に若返ってしまう。その後も予知などの特殊能力を備えるようになる。また、若返る前の若い頃に振られた婚約者ラウラと瓜二つの女性ヴェロニカと恋に落ちるが、彼女は1400年前にインドに住んでいたルピニという女性の転生であることがわかる。

このように内容は幻想譚なのであるが、残念ながらそれが効果的に映像化されていない。目まぐるしく展開するストーリーは、ドミニクがしゃべることでのみ展開していくので、正直言って映画としても面白みはない。小説で読めば面白いと思う。後半はドミニクとヴェロニカに焦点が当てられてかなり落ち着いて、ヴェロニカを演じるアレクサンドラ・マリア・ララの美しさもあって、少しはマシであるが、それでもどこか含みを持っているような顔つきのティム・ロスをずっと見せられるだけでは、退屈さは否めない。個人的には、言語とか言語の起源がもう少し内容に関係してくると思っていただけに、残念である。

演出や映像にあまり凝っていないのも、この映画を評価できない点である。そもそも、ティム・ロスにずっと英語をしゃべらせている点で、この映画を認めることはできない。いくらでも小説を勘案して背景を変えることができるにも関わらず、舞台をルーマニアにするのであれば、いくら幻想譚であったとしても、ルーマニア語を使うべきである。特に言語がひとつのテーマになっているにも関わらず、そこら辺の言語感覚が麻痺しているような作品は、いくら巨匠が監督しているにしても、駄作にすぎない。また、若返ってから10年以上のときが経つにも関わらずティム・ロスが老けないのは、演出の怠慢なのか、年を取らないという物語上の設定なのかもわからない。夢と現実とか、自我の分裂とか、突然出てくる哲学的な議論とかどれも中途半端で、消化不良のままである。いくらこういう高尚な話題をまぶしたところで、駄作は駄作なのである。(読んではいないが)原作は宗教学者が書いているので、もちろん駄作ではないと思う。
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